チート級にハイスペックでイケメンな友人が、天使のように可愛い娘ちゃんを溺愛しすぎている件について。
その18.夏風邪
ある夏の日のことである。
俺の命よりも大切な可愛くて愛しい一人娘が、
「へっくちん!」
夏風邪を引いた。
「ごほっ! ごほっ!」
「優……っ!! 大丈夫か!?」
辛そうに咳を繰り返す優。その背中を優しくさすりながら、俺は後悔の念に苛まれていた。
(クソッ! 失敗した……!!)
こんなことなら医者になっていればよかった……クソッ……!!
いや、待てよ?今からでも遅くないな。
そうだ、医師免許を取ろう。
そんなことを考えていると、玄関のチャイムが鳴り客の来訪を知らせる。
「おきゃくさん……?」
「……優。パパちょっと玄関見てくるから、少し待ってろよ。すぐに戻る」
不安げな顔で俺を見る優に微笑みを向け、頭を撫でつつ額に口づけてから玄関へ向かう。
その間にも、呼び鈴は鳴りやまない。
ピンポーン!ピンポンピンポーン!ピンポーンピンポーン!ピピピピピンポーン!ピーンポーン!
「うるせぇなインターホン口に詰めて一生黙らせるぞテメー」
「真也……っ!! 何でもっと早く開けてくれないの!? 一大事なのに呑気なものですね!?」
まあ……やって来たのは案の定、残念ながら、樹久だった。
とりあえず、樹久の顔面を手の甲で殴ってから仕方なく家の中に入れてやれば、ロリコンは子供部屋まで忍び足で猛ダッシュ。
慎重な手つきで扉を開き優の姿をとらえた瞬間、樹久は泣きながらその場に崩れ落ちた。
「優ちゃぁぁぁん!! 大丈夫かぁぁぁ!! 死ぬなぁぁぁ!!」
「おい、声のボリュームを下げろノミ虫」
「グフッ!」
入り口でへたりこむその体を蹴り飛ばし、俺も室内へ入る。
優は目線をゆっくり移動させると、樹久を見るなりふわふわと笑った。
「きっちゃん……!」
「優ちゃぁん!」
這うような動きでベッドに近寄った樹久は、先ほどからずっと手にぶら下げていたビニール袋を布団の上でひっくり返す。
中から出てきたのは……プリン、ゼリー、アイス、果物の缶詰め、スポーツドリンク、ジュースがそれぞれ三種類。
それから、熱冷まし用の冷却ジェルシートにラブキュアのおもちゃ。
次に、もう片方に持っていた箱を開けば……チョコケーキ、ショートケーキ、チーズケーキ、ロールケーキ、シュークリームが顔を出す。
「どれが食べたい? ぜんぶ優ちゃんのだから好きなだけ食べていいよ!」
「樹久……」
お前でもそんな気の利いたことができたんだな……お前に初めて感動を覚えたぞ、俺は。
仕方ねぇ、少しランクを上げておくか。
道路になぜか片方だけ落ちてる軍手の次に好きだぞ、樹久。
「じゃあ……シュークリームたべたい……」
「よしわかった! シュークリームだな! ちなみに俺が食べたいのはYOUだぜ優ちゃん! なんちゃっ……テンガノ湖!!」
やっぱりやめだ、こいつはゴキブリの次にしておこう。
樹久には回し蹴りをプレゼントし、優の体をそっと抱き起こす。
シュークリームを差し出すと、優は小さな両手でしっかりと持ち小動物のようにはむはむと食べ始めた。
(ヤバいな可愛すぎる……)
「やっべー可愛い……」
写真撮影をしていると、残念ながら復活したらしい樹久が隣にやって来て優に携帯のカメラレンズを向ける。
「家中での写真撮影はご遠慮ください虫けら様」
「お客様じゃなくて!?」
「様を付けてやっただけありがたく思え」
樹久の手から携帯を取り上げ、今し方撮ったであろう優の写真と、『エンジェル』と名のついたフォルダにあった画像を全て消去。
「ああああ!! 俺の!! 俺の優ちゃんコレクションが……ッ!!」
めそめそ泣き始めた樹久はとりあえずスルー。
シュークリームを食べ終えた優の手をティッシュで拭き、スポーツドリンクの蓋を開けて手渡す。
頬はまだわずかに赤く、汗の滲む額に手を当てた。
「熱は……少し下がったな。まだ何か食べるか?」
「もうほしくない……」
「そうか……」
食欲もなくなっているらしい。
寝転がるように促せば、ベッドに小さな体を沈ませる。
布団を被せてから、樹久の買ってきた冷却ジェルシートを額に貼ってやった。
「つめたい……」
「寒いか?」
「ううん、きもちいい……」
「そうか……パパもきっちゃんもここにいるから、優はまた寝てていいぞ」
「うん……」
「おやすみ」
「おやすみなさい……」
ふわりと笑い、目を閉じる優。
一定のリズムで布団を軽く叩いていると、少ししてから小さな寝息が耳に届いた。
(寝たか)
優の綺麗な黒髪を撫でれば、横からぬっとロリコンが出てくる。
「なあ、真也……優ちゃんが苦しまず最速で完治するためにはあとは何が足りないと思う……?」
「凄腕の名医だろうな」
「……一応聞くけど、俺は医者になる! とか言い出さないよな?」
「……」
「ちょっと? 真也さん? ねえ? 何でなにも答えないの?!」
その日は二人して朝まで付きっきりで優の看病をしていた。
――……しかし、後日。
『も、もじもじ……真゛也゛……? ゴホッ! やべえよ……あの、ゴレ゛……ゲホッゲホッ! マジヤバい……ゲホッ! ゴホッ! どれぐらい゛ヤバイか、例えるど……ゲェーッホ! あの……ホントにヤバい……ウェッホ!』
「要領を得ねーなタコスケ。切っていいか?」
『凄腕の名医になって助けに来て……』
樹久に移ったらしいが……まあ、その話はどうでもいいか。
俺の命よりも大切な可愛くて愛しい一人娘が、
「へっくちん!」
夏風邪を引いた。
「ごほっ! ごほっ!」
「優……っ!! 大丈夫か!?」
辛そうに咳を繰り返す優。その背中を優しくさすりながら、俺は後悔の念に苛まれていた。
(クソッ! 失敗した……!!)
こんなことなら医者になっていればよかった……クソッ……!!
いや、待てよ?今からでも遅くないな。
そうだ、医師免許を取ろう。
そんなことを考えていると、玄関のチャイムが鳴り客の来訪を知らせる。
「おきゃくさん……?」
「……優。パパちょっと玄関見てくるから、少し待ってろよ。すぐに戻る」
不安げな顔で俺を見る優に微笑みを向け、頭を撫でつつ額に口づけてから玄関へ向かう。
その間にも、呼び鈴は鳴りやまない。
ピンポーン!ピンポンピンポーン!ピンポーンピンポーン!ピピピピピンポーン!ピーンポーン!
「うるせぇなインターホン口に詰めて一生黙らせるぞテメー」
「真也……っ!! 何でもっと早く開けてくれないの!? 一大事なのに呑気なものですね!?」
まあ……やって来たのは案の定、残念ながら、樹久だった。
とりあえず、樹久の顔面を手の甲で殴ってから仕方なく家の中に入れてやれば、ロリコンは子供部屋まで忍び足で猛ダッシュ。
慎重な手つきで扉を開き優の姿をとらえた瞬間、樹久は泣きながらその場に崩れ落ちた。
「優ちゃぁぁぁん!! 大丈夫かぁぁぁ!! 死ぬなぁぁぁ!!」
「おい、声のボリュームを下げろノミ虫」
「グフッ!」
入り口でへたりこむその体を蹴り飛ばし、俺も室内へ入る。
優は目線をゆっくり移動させると、樹久を見るなりふわふわと笑った。
「きっちゃん……!」
「優ちゃぁん!」
這うような動きでベッドに近寄った樹久は、先ほどからずっと手にぶら下げていたビニール袋を布団の上でひっくり返す。
中から出てきたのは……プリン、ゼリー、アイス、果物の缶詰め、スポーツドリンク、ジュースがそれぞれ三種類。
それから、熱冷まし用の冷却ジェルシートにラブキュアのおもちゃ。
次に、もう片方に持っていた箱を開けば……チョコケーキ、ショートケーキ、チーズケーキ、ロールケーキ、シュークリームが顔を出す。
「どれが食べたい? ぜんぶ優ちゃんのだから好きなだけ食べていいよ!」
「樹久……」
お前でもそんな気の利いたことができたんだな……お前に初めて感動を覚えたぞ、俺は。
仕方ねぇ、少しランクを上げておくか。
道路になぜか片方だけ落ちてる軍手の次に好きだぞ、樹久。
「じゃあ……シュークリームたべたい……」
「よしわかった! シュークリームだな! ちなみに俺が食べたいのはYOUだぜ優ちゃん! なんちゃっ……テンガノ湖!!」
やっぱりやめだ、こいつはゴキブリの次にしておこう。
樹久には回し蹴りをプレゼントし、優の体をそっと抱き起こす。
シュークリームを差し出すと、優は小さな両手でしっかりと持ち小動物のようにはむはむと食べ始めた。
(ヤバいな可愛すぎる……)
「やっべー可愛い……」
写真撮影をしていると、残念ながら復活したらしい樹久が隣にやって来て優に携帯のカメラレンズを向ける。
「家中での写真撮影はご遠慮ください虫けら様」
「お客様じゃなくて!?」
「様を付けてやっただけありがたく思え」
樹久の手から携帯を取り上げ、今し方撮ったであろう優の写真と、『エンジェル』と名のついたフォルダにあった画像を全て消去。
「ああああ!! 俺の!! 俺の優ちゃんコレクションが……ッ!!」
めそめそ泣き始めた樹久はとりあえずスルー。
シュークリームを食べ終えた優の手をティッシュで拭き、スポーツドリンクの蓋を開けて手渡す。
頬はまだわずかに赤く、汗の滲む額に手を当てた。
「熱は……少し下がったな。まだ何か食べるか?」
「もうほしくない……」
「そうか……」
食欲もなくなっているらしい。
寝転がるように促せば、ベッドに小さな体を沈ませる。
布団を被せてから、樹久の買ってきた冷却ジェルシートを額に貼ってやった。
「つめたい……」
「寒いか?」
「ううん、きもちいい……」
「そうか……パパもきっちゃんもここにいるから、優はまた寝てていいぞ」
「うん……」
「おやすみ」
「おやすみなさい……」
ふわりと笑い、目を閉じる優。
一定のリズムで布団を軽く叩いていると、少ししてから小さな寝息が耳に届いた。
(寝たか)
優の綺麗な黒髪を撫でれば、横からぬっとロリコンが出てくる。
「なあ、真也……優ちゃんが苦しまず最速で完治するためにはあとは何が足りないと思う……?」
「凄腕の名医だろうな」
「……一応聞くけど、俺は医者になる! とか言い出さないよな?」
「……」
「ちょっと? 真也さん? ねえ? 何でなにも答えないの?!」
その日は二人して朝まで付きっきりで優の看病をしていた。
――……しかし、後日。
『も、もじもじ……真゛也゛……? ゴホッ! やべえよ……あの、ゴレ゛……ゲホッゲホッ! マジヤバい……ゲホッ! ゴホッ! どれぐらい゛ヤバイか、例えるど……ゲェーッホ! あの……ホントにヤバい……ウェッホ!』
「要領を得ねーなタコスケ。切っていいか?」
『凄腕の名医になって助けに来て……』
樹久に移ったらしいが……まあ、その話はどうでもいいか。