チート級にハイスペックでイケメンな友人が、天使のように可愛い娘ちゃんを溺愛しすぎている件について。
その20.影踏み
こんにちは、読者の皆さん。またまたきっちゃんがお送りします。
「きっちゃん、ふーんだっ!」
「クソーツカマッチャッタクヤシイー優ちゃんは強いな!」
真夏の太陽が照りつける下で、俺がいま優ちゃんとやっているのは影踏み。
いや……あと2人。みゆちゃんとみかこちゃんもいるけどな!
影踏み、皆さんはご存知だろうか?
この遊びは文字通り、影を踏まれたらダメな鬼ごっこのようなもの。それをみんなでやっているわけだが、
「あ……暑い……」
老体にこの暑さは厳しいのう……セミがうるさいのう、脇汗が止まらんのう。
「あつくなーい!」
「ぜんぜんへーきだよ!」
「たのしいねー!」
子供は元気じゃのう。
すまんな、みつ子さんや。わしゃあ暑くて面白いボケが考えられんわい……。
「やだ、じいさんや。それは言わない約束でしょう」
裏声とともに突然現れたのは、何やらコンビニの袋を片手に持った真也……の、体を包む、中央に“塊根性”と書かれた白いTシャツに目がいく。
俺の体を包んでいるのも、塊根性Tシャツ。
つまり、
「ペアルックじゃん……ッ!!」
「そうらしいな樹久。ふざけんなよカス。まだ優ともペアルックになんかしたことねーんだぞクズ。傷ついたから慰謝料よこせゴミ」
「何でだんだんと呼び方が酷くなってるの? 今ので俺の心も傷ついたよ?」
暑さにイラついているのか、真也がいつもより辛辣な気がする。
脇からも目からも汗が出そうだよおじいちゃんは。
「じゃあいい、仕方ねーが妥協してやる。今すぐ地球上に一片のDNAも残さず消えろ」
「妥協とはなんだろうか真也くん」
泣きそうな俺の周りでは、ちびっこ3人が楽しそうに駆け回り一斉に俺の影を踏み始めた。
待って本当に泣きそうなんだけど。
「チッ……じゃあ今すぐ脱げ」
「露出趣味があると思った!? 残念!! ノーマルでした!!」
瞬間、綺麗な回し蹴りが首にクリーンヒット。
歓声をあげるちびっこ達。地面とこんにちはする俺。
「ゆうちゃんのぱぱすごーい!」
「つよーい!」
……泣きたい。
扱いはひどいし地面は熱いし太陽も熱いしミミズは干からびてるし、泣いていいよね?
「ほら、みんなで分けて食べろ」
「ぱぱありがとう!」
「いただきまーす!」
真也がレジ袋から出したアイスを手渡せば、優ちゃんは太陽よりも眩しい笑顔を浮かべる。
3人で分けているのを横目に見つつ、体を起こして真也に近づいた。
「真也、俺のは?」
「やだ、おじいちゃん。ご飯は先週食べたでしょう?」
「みつ子さんや、毎日食べさせてくれんかのう」
無視してスポーツドリンクを取り出す辺り、まあ予想はしていたけど俺のはないらしい。
わかってたよ……ウン、きっちゃんわかってた……。
「グスン……ううっ……」
「……ぱぱー、きっちゃんないてるよ?」
「大丈夫。嘘泣きだ、ほっとけ」
マイスウィートエンジェル優ちゃんは優しいというのに、真也ときたらどこまでも残酷無慈悲である。
本当に同じ血が流れているのか心の底から不思議だ。
体育座りで腕に顔を埋めたまま、
「嘘泣きじゃないもん……」
「……あ、まずい。優のパンツが見えてるな」
「!?」
即座に顔を上げて見てみるが、優ちゃんのパンツはしっかりスカートに隠れていた。
そして、真也の鋭い目と数秒間見つめ合う。
「やっぱり嘘泣きじゃねーかてめぇ。つーか優のパンツを見る気か? 目玉ひねり潰すぞ」
なんだよ!真也が言ったくせに!俺のせいじゃないもん!……と、言ってやりたいが、首を絞められているため声が出せない。
ふと、
「ぱぱときっちゃん、ふくおそろい!」
「ほんとだー!」
優ちゃんが、ペアルックに気がついた。
あ、五七五だなこれ。字足らずだけれども。
「ぱぱときっちゃん、なかよしだね!」
「そうだぞー、俺と樹久は仲良しだ。なあ、樹久くん」
「真也くん……あえて問おう――……」
仲良しとは何だろうか……?
少なくとも、現在進行形で膝蹴りを食らわせているような関係は違うよな。嗚呼、違うとも。
親友ならば地面に放り投げるのもやめよう。
「ぱぱもいっしょにかげふみしよー!」
「しようしようー!」
「おう、いいぞ」
「やったー! じゃあぱぱがおに!」
待て待て待て待て!優ちゃん、みゆちゃん、みかこちゃん、ちょっと待とう!真也が鬼とかあの、文字通りモノホンの鬼になってヤバいから。
現に今、真也は獲物を狙うライオンのようにぎらついた目で俺を見ている。
これがBL恋愛小説だったら相当おいしい感じだが、残念!コメディーでした!助けて!
BL恋愛小説ならまだどんなによかっただろうか。
「じゃあ、優たちが影を踏まれたら交代な。樹久は影を踏まれたら斬首刑な」
「俺のペナルティーでかくね!?」
優ちゃんたちは「きゃー」なんて可愛い悲鳴をあげるが、俺は体が悲鳴をあげている。
猛スピードで追ってくる真也から、ただひたすら全力疾走で逃げ続けた。
「真也! タイム! ちょっ! タイム! ヤバいから!」
その後――……。
住宅街に俺の断末魔が響き渡ったのは言うまでもない。
「きっちゃん、ふーんだっ!」
「クソーツカマッチャッタクヤシイー優ちゃんは強いな!」
真夏の太陽が照りつける下で、俺がいま優ちゃんとやっているのは影踏み。
いや……あと2人。みゆちゃんとみかこちゃんもいるけどな!
影踏み、皆さんはご存知だろうか?
この遊びは文字通り、影を踏まれたらダメな鬼ごっこのようなもの。それをみんなでやっているわけだが、
「あ……暑い……」
老体にこの暑さは厳しいのう……セミがうるさいのう、脇汗が止まらんのう。
「あつくなーい!」
「ぜんぜんへーきだよ!」
「たのしいねー!」
子供は元気じゃのう。
すまんな、みつ子さんや。わしゃあ暑くて面白いボケが考えられんわい……。
「やだ、じいさんや。それは言わない約束でしょう」
裏声とともに突然現れたのは、何やらコンビニの袋を片手に持った真也……の、体を包む、中央に“塊根性”と書かれた白いTシャツに目がいく。
俺の体を包んでいるのも、塊根性Tシャツ。
つまり、
「ペアルックじゃん……ッ!!」
「そうらしいな樹久。ふざけんなよカス。まだ優ともペアルックになんかしたことねーんだぞクズ。傷ついたから慰謝料よこせゴミ」
「何でだんだんと呼び方が酷くなってるの? 今ので俺の心も傷ついたよ?」
暑さにイラついているのか、真也がいつもより辛辣な気がする。
脇からも目からも汗が出そうだよおじいちゃんは。
「じゃあいい、仕方ねーが妥協してやる。今すぐ地球上に一片のDNAも残さず消えろ」
「妥協とはなんだろうか真也くん」
泣きそうな俺の周りでは、ちびっこ3人が楽しそうに駆け回り一斉に俺の影を踏み始めた。
待って本当に泣きそうなんだけど。
「チッ……じゃあ今すぐ脱げ」
「露出趣味があると思った!? 残念!! ノーマルでした!!」
瞬間、綺麗な回し蹴りが首にクリーンヒット。
歓声をあげるちびっこ達。地面とこんにちはする俺。
「ゆうちゃんのぱぱすごーい!」
「つよーい!」
……泣きたい。
扱いはひどいし地面は熱いし太陽も熱いしミミズは干からびてるし、泣いていいよね?
「ほら、みんなで分けて食べろ」
「ぱぱありがとう!」
「いただきまーす!」
真也がレジ袋から出したアイスを手渡せば、優ちゃんは太陽よりも眩しい笑顔を浮かべる。
3人で分けているのを横目に見つつ、体を起こして真也に近づいた。
「真也、俺のは?」
「やだ、おじいちゃん。ご飯は先週食べたでしょう?」
「みつ子さんや、毎日食べさせてくれんかのう」
無視してスポーツドリンクを取り出す辺り、まあ予想はしていたけど俺のはないらしい。
わかってたよ……ウン、きっちゃんわかってた……。
「グスン……ううっ……」
「……ぱぱー、きっちゃんないてるよ?」
「大丈夫。嘘泣きだ、ほっとけ」
マイスウィートエンジェル優ちゃんは優しいというのに、真也ときたらどこまでも残酷無慈悲である。
本当に同じ血が流れているのか心の底から不思議だ。
体育座りで腕に顔を埋めたまま、
「嘘泣きじゃないもん……」
「……あ、まずい。優のパンツが見えてるな」
「!?」
即座に顔を上げて見てみるが、優ちゃんのパンツはしっかりスカートに隠れていた。
そして、真也の鋭い目と数秒間見つめ合う。
「やっぱり嘘泣きじゃねーかてめぇ。つーか優のパンツを見る気か? 目玉ひねり潰すぞ」
なんだよ!真也が言ったくせに!俺のせいじゃないもん!……と、言ってやりたいが、首を絞められているため声が出せない。
ふと、
「ぱぱときっちゃん、ふくおそろい!」
「ほんとだー!」
優ちゃんが、ペアルックに気がついた。
あ、五七五だなこれ。字足らずだけれども。
「ぱぱときっちゃん、なかよしだね!」
「そうだぞー、俺と樹久は仲良しだ。なあ、樹久くん」
「真也くん……あえて問おう――……」
仲良しとは何だろうか……?
少なくとも、現在進行形で膝蹴りを食らわせているような関係は違うよな。嗚呼、違うとも。
親友ならば地面に放り投げるのもやめよう。
「ぱぱもいっしょにかげふみしよー!」
「しようしようー!」
「おう、いいぞ」
「やったー! じゃあぱぱがおに!」
待て待て待て待て!優ちゃん、みゆちゃん、みかこちゃん、ちょっと待とう!真也が鬼とかあの、文字通りモノホンの鬼になってヤバいから。
現に今、真也は獲物を狙うライオンのようにぎらついた目で俺を見ている。
これがBL恋愛小説だったら相当おいしい感じだが、残念!コメディーでした!助けて!
BL恋愛小説ならまだどんなによかっただろうか。
「じゃあ、優たちが影を踏まれたら交代な。樹久は影を踏まれたら斬首刑な」
「俺のペナルティーでかくね!?」
優ちゃんたちは「きゃー」なんて可愛い悲鳴をあげるが、俺は体が悲鳴をあげている。
猛スピードで追ってくる真也から、ただひたすら全力疾走で逃げ続けた。
「真也! タイム! ちょっ! タイム! ヤバいから!」
その後――……。
住宅街に俺の断末魔が響き渡ったのは言うまでもない。