チート級にハイスペックでイケメンな友人が、天使のように可愛い娘ちゃんを溺愛しすぎている件について。
その23.運動会(前編)
「――……というわけであるからしてぇー、どちらも、最後まで精一杯頑張るように!」
マイクを通して、ハゲたオッサn……いや失礼。
頭の眩しい校長先生が生徒諸君に開会の挨拶と激励の言葉を送る中、俺――城田樹久は運動場のすみにいた。
そうです、今日は優ちゃんの運動会です。
あらかたの流れは皆さんも想像できているだろうが、一応説明しよう。
***
俺は今朝3時に、真也からの嬉しくないモーニングコールで目を覚ました。
「……もしもし?」
『よう、起きたか虫けら』
「第一声がそれ? 真也ぁ……こんな時間に何……? やっと優ちゃんが俺の嫁になる事実を受け入れる気になったわけ……?」
『んなわけねぇだろ一生眠ってろタコスケ』
プツッ、ツーッ……ツーッ……
……え?なに?どういうこと?
夜中に叩き起こしといて罵っただけで終わり?そういうプレイなの?斬新だね?
通話終了と表示された画面を眺めていると、再び真也から電話がかかってきた。
「もしもし? 真也、悪いけど俺Mじゃないからさ、」
『そうだな、SHINEのSだな』
「ほんっとナチュラルに俺を傷つけるのが得意だよね真也って」
『お前、今どうせ有給消化中で暇だろ? 今日な、優の運動会があるんだよ』
あ、やっぱり無視?いや、優ちゃんの運動会には絶対に行くけどね?
……っていうかね真也くん、夜中の3時は有給中の人間以外もブラック企業で残業してない限り大体の人は暇だと思うんだ。
つーか電話してる時点でお前も暇だろ!同じ穴のむじなじゃい!ぺっぺっ!
『命令だ。樹久、場所取りしてこい』
「お任せください、ご主人! とでも言うと思いましたか!?」
『じゃーな、頼んだぞ』
***
……という感じで、俺は夜中の3時過ぎに涙をこらえて場所取りしに小学校へ行ったわけですよ。
一番いい場所を必死で確保したわけですよ。
ところがね?運動会が始まってみれば真也の野郎は、ど真ん中正面にある来賓席で優雅に足を組んでいやがった。
さすがに泣いた。
俺の苦労は!?睡眠時間返せ!!だいたい何で来賓席なんだよ!!
「ああ……俺、PTAの会長やってるからな」
「お前はどこまでハイスペックになれば気がすむわけ?」
そんなやり取りをしていると、スピーカーから入場曲が流れ始める。
入場門から行進して現れたのは1年生たち。たしか、最初のプログラムは1年生の障害物競走だ。
瞬間、真也は勢いよく立ち上がりカメラを構える。
「……真也、なにそれ」
カメラと言っても、普通のデジカメや一眼レフじゃない。
ほら……よくテレビで見る、あのでっかいカメラだ。1カメとか2カメとか呼ばれるアレ。
「知り合いにコネ回して借りた」
「お前ホント優ちゃんのことになるとすげーのな」
あ、まだ説明してなかったよな。 真也の職業。
コイツは世界的にも有名な某大手おもちゃ会社の副社長である。
俺?俺は……あの、アレだ……ほら、ぽ……ポシェットモンスターのビルリーダー……。
あっ!そんなことよりほら!そうこうしている間に、優ちゃんの出番がやってきたぞ!
「位置について、よーい……」
パァンッ!音と共に、優ちゃん含め4人がいっせいに走り出す。
「優ぅぅぅ!! 頑張れぇぇぇ!! 負けるなぁぁぁ!!」
「真也、お前そんな熱血キャラだったっけ?」
真也の応援のかいあってか、優ちゃんは見事1位。
エンジェルは嬉しそうに笑い、こちらに向かって手を振った。
「なんだあれ可愛すぎだろ……PV作るか……」
……うん。聞いてもいい?何のPV?俺にも焼き増しお願いします。
***
「位置について、よーい……ドン!」
さーあ、始まりました!エンジェル他4名による徒競走です!
内から2番目コーナーを走るのは、マイエンジェル優ちゃーん!
外側から女子生徒が追い上げてきます!優ちゃん逃げ切れるのかー!?
おおっとー!ここで1番目コーナー走者が転倒!大丈夫でしょうかー!?
4番目コーナー走者、靴が脱げてしまったぁ!その間にも優ちゃんは走る走るー!もう誰にも彼女は止められなーい!
まさしく風!疾風のごとき華麗な走りだー!
そしてここでゴール!1位!優ちゃんまたしても1位です!
「オイ、うるせーぞ虫けら。優の声が拾えねーだろうが」
「むしろこの賑やかさの中ピンポイントで優ちゃんの声だけを拾えるそのマイクに驚きだわ。何世紀未来から持って来た発明品?」
***
しばらくしてから、再び1年生が入場してくる。
全員、両手には黄色いポンポン。頭にコシアンマンのお面を付けて。
配置につくと、『元気りんりん』が流れ始めた。
それに合わせて、ポンポンを一生懸命振る優ちゃん。一生懸命その場で足踏みする優ちゃん。一生懸命歌を歌う優ちゃん。
ああ……可愛い……。
「なにあれ、天使の舞い? 可愛すぎじゃね? 人間国宝じゃん……」
「お前だけ天に召されてろ」
***
午前中に優ちゃんが出るプログラムは全て終わり、昼食休憩がやってきた。
少ししてから、優ちゃんが来賓席に駆けてくる。
「ぱぱー! 見てた!? ゆう、1位とったよー!」
「しっかりばっちり見てたぞー! すごいな優はー! 速かったなー! 帰りにラブキュアの変身セット買ってやるからなー!」
「ほんと!? やったー!」
真也の教育方法は、アメとアメとアメとアメだ。
ムチ?ああ、燃えないゴミの日に出したってさ。
「ほら。お弁当作ってきたぞー、優」
「ラブキュアだー!」
真也お手製の、キャラ弁である。
三段の重箱に、ラブハッピーとラブピースとラブキューティーが見事に描かれていた。
「……真也、お前ホントにすごいな……尊敬するわ……」
「あ? 靴でも舐めさせてやろうか?」
マイクを通して、ハゲたオッサn……いや失礼。
頭の眩しい校長先生が生徒諸君に開会の挨拶と激励の言葉を送る中、俺――城田樹久は運動場のすみにいた。
そうです、今日は優ちゃんの運動会です。
あらかたの流れは皆さんも想像できているだろうが、一応説明しよう。
***
俺は今朝3時に、真也からの嬉しくないモーニングコールで目を覚ました。
「……もしもし?」
『よう、起きたか虫けら』
「第一声がそれ? 真也ぁ……こんな時間に何……? やっと優ちゃんが俺の嫁になる事実を受け入れる気になったわけ……?」
『んなわけねぇだろ一生眠ってろタコスケ』
プツッ、ツーッ……ツーッ……
……え?なに?どういうこと?
夜中に叩き起こしといて罵っただけで終わり?そういうプレイなの?斬新だね?
通話終了と表示された画面を眺めていると、再び真也から電話がかかってきた。
「もしもし? 真也、悪いけど俺Mじゃないからさ、」
『そうだな、SHINEのSだな』
「ほんっとナチュラルに俺を傷つけるのが得意だよね真也って」
『お前、今どうせ有給消化中で暇だろ? 今日な、優の運動会があるんだよ』
あ、やっぱり無視?いや、優ちゃんの運動会には絶対に行くけどね?
……っていうかね真也くん、夜中の3時は有給中の人間以外もブラック企業で残業してない限り大体の人は暇だと思うんだ。
つーか電話してる時点でお前も暇だろ!同じ穴のむじなじゃい!ぺっぺっ!
『命令だ。樹久、場所取りしてこい』
「お任せください、ご主人! とでも言うと思いましたか!?」
『じゃーな、頼んだぞ』
***
……という感じで、俺は夜中の3時過ぎに涙をこらえて場所取りしに小学校へ行ったわけですよ。
一番いい場所を必死で確保したわけですよ。
ところがね?運動会が始まってみれば真也の野郎は、ど真ん中正面にある来賓席で優雅に足を組んでいやがった。
さすがに泣いた。
俺の苦労は!?睡眠時間返せ!!だいたい何で来賓席なんだよ!!
「ああ……俺、PTAの会長やってるからな」
「お前はどこまでハイスペックになれば気がすむわけ?」
そんなやり取りをしていると、スピーカーから入場曲が流れ始める。
入場門から行進して現れたのは1年生たち。たしか、最初のプログラムは1年生の障害物競走だ。
瞬間、真也は勢いよく立ち上がりカメラを構える。
「……真也、なにそれ」
カメラと言っても、普通のデジカメや一眼レフじゃない。
ほら……よくテレビで見る、あのでっかいカメラだ。1カメとか2カメとか呼ばれるアレ。
「知り合いにコネ回して借りた」
「お前ホント優ちゃんのことになるとすげーのな」
あ、まだ説明してなかったよな。 真也の職業。
コイツは世界的にも有名な某大手おもちゃ会社の副社長である。
俺?俺は……あの、アレだ……ほら、ぽ……ポシェットモンスターのビルリーダー……。
あっ!そんなことよりほら!そうこうしている間に、優ちゃんの出番がやってきたぞ!
「位置について、よーい……」
パァンッ!音と共に、優ちゃん含め4人がいっせいに走り出す。
「優ぅぅぅ!! 頑張れぇぇぇ!! 負けるなぁぁぁ!!」
「真也、お前そんな熱血キャラだったっけ?」
真也の応援のかいあってか、優ちゃんは見事1位。
エンジェルは嬉しそうに笑い、こちらに向かって手を振った。
「なんだあれ可愛すぎだろ……PV作るか……」
……うん。聞いてもいい?何のPV?俺にも焼き増しお願いします。
***
「位置について、よーい……ドン!」
さーあ、始まりました!エンジェル他4名による徒競走です!
内から2番目コーナーを走るのは、マイエンジェル優ちゃーん!
外側から女子生徒が追い上げてきます!優ちゃん逃げ切れるのかー!?
おおっとー!ここで1番目コーナー走者が転倒!大丈夫でしょうかー!?
4番目コーナー走者、靴が脱げてしまったぁ!その間にも優ちゃんは走る走るー!もう誰にも彼女は止められなーい!
まさしく風!疾風のごとき華麗な走りだー!
そしてここでゴール!1位!優ちゃんまたしても1位です!
「オイ、うるせーぞ虫けら。優の声が拾えねーだろうが」
「むしろこの賑やかさの中ピンポイントで優ちゃんの声だけを拾えるそのマイクに驚きだわ。何世紀未来から持って来た発明品?」
***
しばらくしてから、再び1年生が入場してくる。
全員、両手には黄色いポンポン。頭にコシアンマンのお面を付けて。
配置につくと、『元気りんりん』が流れ始めた。
それに合わせて、ポンポンを一生懸命振る優ちゃん。一生懸命その場で足踏みする優ちゃん。一生懸命歌を歌う優ちゃん。
ああ……可愛い……。
「なにあれ、天使の舞い? 可愛すぎじゃね? 人間国宝じゃん……」
「お前だけ天に召されてろ」
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午前中に優ちゃんが出るプログラムは全て終わり、昼食休憩がやってきた。
少ししてから、優ちゃんが来賓席に駆けてくる。
「ぱぱー! 見てた!? ゆう、1位とったよー!」
「しっかりばっちり見てたぞー! すごいな優はー! 速かったなー! 帰りにラブキュアの変身セット買ってやるからなー!」
「ほんと!? やったー!」
真也の教育方法は、アメとアメとアメとアメだ。
ムチ?ああ、燃えないゴミの日に出したってさ。
「ほら。お弁当作ってきたぞー、優」
「ラブキュアだー!」
真也お手製の、キャラ弁である。
三段の重箱に、ラブハッピーとラブピースとラブキューティーが見事に描かれていた。
「……真也、お前ホントにすごいな……尊敬するわ……」
「あ? 靴でも舐めさせてやろうか?」