チート級にハイスペックでイケメンな友人が、天使のように可愛い娘ちゃんを溺愛しすぎている件について。
その29.クリスマス(後編)
「よし、それじゃあ作戦を確認するぞ」
「おう!」
ただ今、深夜の2時半。
雪の降り積もるそんな真夜中に、なぜ俺と真也がサンタの格好をして子供部屋の前にいるのかは……お察しの通りである。
2人で顔を寄せ、ひそひそと作戦会議中だ。
「いいか……まず俺が、空飛ぶ樹久に乗って現れる。すかさずそこで樹久が爆発し、驚く優に俺がプレゼントをわたし、最後に樹久がベランダから飛び降りて優が喜びハッピーエンドだ」
「いや、そこまではっきりとした世界が黒に染まるバッドエンドは初めて聞いたわ」
そもそも、空飛ぶ俺ってなに?無理に決まってるね?
そしてなぜ俺は爆発するわけ?なぜ最後にベランダから飛び降りるの?ちょっと理解不能だね?
そんなの見たら優ちゃん泣き叫ぶと思うんだ。一生もののトラウマだと思うんだ。
「チッ……じゃあ仕方ねぇ、プランYに変更だ」
「プラン多くね?」
そんなことを言いながらサンタお決まりの白髭を装着し、あらかじめ用意していたプレゼントを取り出す。
もちろん、プレゼントは俺と真也の分で合わせて2つだ。
今、優ちゃんズルいと思ったちびっこ諸君。
文句は家にサンタを一人しか呼んでくれない両親に言ってくれたまえ。
「よし……じゃあ、まず俺から行くぜ!」
「絶対に姿を見られるなよ」
「任せとけ!」
音を立てないよう、慎重に……しんっちょーうに、扉を開く。
「……」
「すぅ……すぅ……」
耳に届くのは優ちゃんの寝息。室内は静まり返っている。
そーっと枕元に近寄ると、ガシャンッ!
「……!?」
足元に置いてあったらしいおもちゃを蹴ってしまった。
跳ね上がる心臓。短くうなり、目をこする優ちゃん。
「んー……」
その瞳に俺が映される前に、寝顔をスマホで撮影してからすごすごと子供部屋を退室。
案の定、真也は訝しげに目を細めどうしたのかと首を傾げた。
「……」
そんな真也に向かってこう告げる。
「何の成果も得られませんでした、ってやつだな!!」
しばらくの沈黙のあと、真也は白髭を撫でながら言葉を吐いた。
「貴様が右手に持っている物は何だ……?」
「スマホです! 可愛い寝顔だったものですから、つい!」
「貴様……盗撮したのか……? 何故だ……何故、今、写真を撮った……?」
「覚めてしまっては元も子もないので、今、撮るべきだと判断しました!」
「そうか……」
***
お察しの通り、俺の優ちゃんフォルダはすっからかんになった。
「今度こそちゃんと置いてこいよ。余計な真似をしたら、撃つ」
「戦場のメリークリスマスは勘弁してください」
サンタ服を整え、白髭をついと撫でる。
プレゼントの入った袋を持ち直し、いざ出陣である!!
「……っ、」
足元に気をつけて、優ちゃんにそろりそろりと歩み寄る。
袋からプレゼントを取り出し、枕元にセッティング完了!
(よし、)
きっちゃんからのプレゼントはラブキュアの着せ替え人形セットだぜ!メリークリスマス!
と、立ち去ろうとしたのだが。
「まって……サンタさん……」
いつの間に目を覚ましたのか、優ちゃんに服のはしを掴まれてしまっていた。
寝ぼけているのか、はっきりと意識があるのか。どちらなのかはわからないが、とりあえず大ピンチだ。
扉の隙間から覗く真也の表情も大ピンチ。何だあの顔イケメンが台無しだぞ。
「サンタさん……きっちゃん……?」
まどろみを残したくりくりの瞳が、月明かりに照らされた俺を見る。
ばっちりしっかり目が合った。確実に、バレてしまった。
そう思い絶望しかけたのだが、
「きっちゃんって……おしごと、サンタさんだったの……?」
思わぬ方向に事態が動く。 『サンタさんは俺だったイコールサンタさんなんていない』じゃなくて『サンタさんイコール俺イコール仕事』と思われているらしい。
(これは……チャンスだ……!)
優ちゃんの頭を優しく撫でながら、なだめるように言い聞かせた。
「ああ。ワシはサンタクロースだったのじゃよ。でも、この事は、皆には秘密じゃぞ。ジジイとの約束じゃ」
自分の口に人差し指を置けば、優ちゃんも同じ仕草をする。
そして、数回深く頷き、優ちゃんはふわふわと笑った。
「みんなには、ないしょ!」
「そうじゃ、内緒じゃ」
それじゃあ、おやすみ。と告げて、子供部屋から退室する。
普段のイケメンに戻った真也は、今度は何とも複雑な表情を浮かべていた。
「ワラジムシのくせに……生意気な……」
「微生物シリーズで罵るのはやめよう?」
後日聞いた話によると、優ちゃんの中で、『俺イコールニート』だったのが、見事に『俺イコールサンタさん』へ進化を遂げたらしい。
「おう!」
ただ今、深夜の2時半。
雪の降り積もるそんな真夜中に、なぜ俺と真也がサンタの格好をして子供部屋の前にいるのかは……お察しの通りである。
2人で顔を寄せ、ひそひそと作戦会議中だ。
「いいか……まず俺が、空飛ぶ樹久に乗って現れる。すかさずそこで樹久が爆発し、驚く優に俺がプレゼントをわたし、最後に樹久がベランダから飛び降りて優が喜びハッピーエンドだ」
「いや、そこまではっきりとした世界が黒に染まるバッドエンドは初めて聞いたわ」
そもそも、空飛ぶ俺ってなに?無理に決まってるね?
そしてなぜ俺は爆発するわけ?なぜ最後にベランダから飛び降りるの?ちょっと理解不能だね?
そんなの見たら優ちゃん泣き叫ぶと思うんだ。一生もののトラウマだと思うんだ。
「チッ……じゃあ仕方ねぇ、プランYに変更だ」
「プラン多くね?」
そんなことを言いながらサンタお決まりの白髭を装着し、あらかじめ用意していたプレゼントを取り出す。
もちろん、プレゼントは俺と真也の分で合わせて2つだ。
今、優ちゃんズルいと思ったちびっこ諸君。
文句は家にサンタを一人しか呼んでくれない両親に言ってくれたまえ。
「よし……じゃあ、まず俺から行くぜ!」
「絶対に姿を見られるなよ」
「任せとけ!」
音を立てないよう、慎重に……しんっちょーうに、扉を開く。
「……」
「すぅ……すぅ……」
耳に届くのは優ちゃんの寝息。室内は静まり返っている。
そーっと枕元に近寄ると、ガシャンッ!
「……!?」
足元に置いてあったらしいおもちゃを蹴ってしまった。
跳ね上がる心臓。短くうなり、目をこする優ちゃん。
「んー……」
その瞳に俺が映される前に、寝顔をスマホで撮影してからすごすごと子供部屋を退室。
案の定、真也は訝しげに目を細めどうしたのかと首を傾げた。
「……」
そんな真也に向かってこう告げる。
「何の成果も得られませんでした、ってやつだな!!」
しばらくの沈黙のあと、真也は白髭を撫でながら言葉を吐いた。
「貴様が右手に持っている物は何だ……?」
「スマホです! 可愛い寝顔だったものですから、つい!」
「貴様……盗撮したのか……? 何故だ……何故、今、写真を撮った……?」
「覚めてしまっては元も子もないので、今、撮るべきだと判断しました!」
「そうか……」
***
お察しの通り、俺の優ちゃんフォルダはすっからかんになった。
「今度こそちゃんと置いてこいよ。余計な真似をしたら、撃つ」
「戦場のメリークリスマスは勘弁してください」
サンタ服を整え、白髭をついと撫でる。
プレゼントの入った袋を持ち直し、いざ出陣である!!
「……っ、」
足元に気をつけて、優ちゃんにそろりそろりと歩み寄る。
袋からプレゼントを取り出し、枕元にセッティング完了!
(よし、)
きっちゃんからのプレゼントはラブキュアの着せ替え人形セットだぜ!メリークリスマス!
と、立ち去ろうとしたのだが。
「まって……サンタさん……」
いつの間に目を覚ましたのか、優ちゃんに服のはしを掴まれてしまっていた。
寝ぼけているのか、はっきりと意識があるのか。どちらなのかはわからないが、とりあえず大ピンチだ。
扉の隙間から覗く真也の表情も大ピンチ。何だあの顔イケメンが台無しだぞ。
「サンタさん……きっちゃん……?」
まどろみを残したくりくりの瞳が、月明かりに照らされた俺を見る。
ばっちりしっかり目が合った。確実に、バレてしまった。
そう思い絶望しかけたのだが、
「きっちゃんって……おしごと、サンタさんだったの……?」
思わぬ方向に事態が動く。 『サンタさんは俺だったイコールサンタさんなんていない』じゃなくて『サンタさんイコール俺イコール仕事』と思われているらしい。
(これは……チャンスだ……!)
優ちゃんの頭を優しく撫でながら、なだめるように言い聞かせた。
「ああ。ワシはサンタクロースだったのじゃよ。でも、この事は、皆には秘密じゃぞ。ジジイとの約束じゃ」
自分の口に人差し指を置けば、優ちゃんも同じ仕草をする。
そして、数回深く頷き、優ちゃんはふわふわと笑った。
「みんなには、ないしょ!」
「そうじゃ、内緒じゃ」
それじゃあ、おやすみ。と告げて、子供部屋から退室する。
普段のイケメンに戻った真也は、今度は何とも複雑な表情を浮かべていた。
「ワラジムシのくせに……生意気な……」
「微生物シリーズで罵るのはやめよう?」
後日聞いた話によると、優ちゃんの中で、『俺イコールニート』だったのが、見事に『俺イコールサンタさん』へ進化を遂げたらしい。