花を愛でる。
目は離さない、ここで負けたら何も言い返せなくなる。
これは彼の為じゃない。早乙女さんの為ではない。私が、秘書として、やれることは全部やりたいから。
社長に嫌われようが、これは私の意志だ。絶対に揺るぐことのない。
「……分かりました」
「え?」
彼の肩を押して体を起こす。社長は神妙な顔つきのまま私を見つめていた。
そのとぼけた顔まで癪に触って、これ以上ここにいたら駄目だと私の本能が告げる。
だから、
「貴方が何も言わないのであれば、私で勝手に動きます」
「……花?」
「勝手に調べて、勝手に解決します」
ベッドを降りて部屋を出ていこうとする私に彼が顔を横に振る。
「花にそこまでしてもらう義理ない」
「だったら、社長が自分で解決していただいてもいいですか?」
「……」
返す言葉がないのか、黙りこくった社長に小さく溜息を吐く。
あぁ、やっと分かった。何故今の彼に対してこんなにも感情が波立つのか。
「……では、失礼します」
彼に頼られていない。私は彼の秘書なのに。
その事実が、自分の力のなさを嫌というほど実感させる。
結局、私は自分に苛立っているのだ。
「……」
情けないのに涙も出ない、そんな自分に。