花を愛でる。
吉川さんが一礼して部屋を出ていったのを見送ると、私は目の前に座る早乙女さんに話を切り出した。
「それで、話とは一体……」
「……その前に、この間は本当にご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
「え?」
「実は私が遊馬さんを追って大阪へ行ったことが後々親にバレてしまいまして」
それって、と言葉を零すと彼女は「違うんです!」と首を激しく横に振った。
「あの人が言ったのではなく、どうやらうちの使用人が父に話してしまったみたいで。それで改めて遊馬さんに謝罪をと思ったのですが、あれから連絡が繋がらなくて……それで田崎さんならって」
「そうだったんですね」
「それに男の人に絡まれていたところを助けていただいたことへのお礼がまだ出来ていなかったなと。この度は助けていただいてありがとうございました」
そう言って頭を下げる彼女に「本当に礼儀正しい人だな」と思う。社長のことが絡まないと。
それくらい、彼女にとって社長の存在は大きいのだと実感する。
「私は大丈夫です。むしろ早乙女さんに何もなくてよかったと思いますよ」
「……それから私、帰るときに田崎さんに少し余計なことを……言ってしまったと思って……」
「っ……」
「田崎さんが気にしていなかったらいいのですが……」
恐る恐る私の顔を見つめる早乙女さんにあの時言われたことを思い出す。
社長には誰にも吐露することが出来ない問題を抱えており、早乙女さんはずっとそれが気がかりで彼の助けになれるように動いてきたが、それ自体を社長に拒否されてしまったという話。
その話の内容こそが、私が今日ここに来た理由。