花を愛でる。



「……ありがとう。でも決めるのは雛子自身だよ。最終的には自分の選択なんだ」

「……」


遊馬さんはもう……


「(したんですね、その選択を……)」


そしてずっと一緒にいたい人を、見つけたんですね。
振られたはずなのにどうしてこんなに清々しい気持ちになるんだろう。

遊馬さんが腰を上げる。もうこの場を離れるのだろう。
この人に出会えてよかった。私に幸せを教えてくれた人。遊馬さんの幸せを誰よりも願っている。

だけど彼の顔を見ていたら、その心配はいらないようだけど。


「じゃあね、雛子」


遊馬さんは最後にもう一度微笑んで部屋を出ていった。その表情にもう迷いは見られなかった。
彼がいなくなった向かいの席を見つめる。今の私に出来ること。私がしたいこと。

私も遊馬さんのような大人になりたい。


「な、なに。遊馬さんはどこに行ったんだ?」


暫くして様子を見に来た父と母が私一人になった部屋を見て驚きの声を上げる。
気性を荒くして「遊馬さんはどうした!?」と私に突っかかって来る父に決意すると、立ち上がって彼と向き合った。


「お父様、お話があります」


私も戦う。遊馬さんのような大人になるために。



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