花を愛でる。



一階のエントランスまで降り、オフィスビルの外に出ると既に社長が手配しただろう車が就いていた。
それに揺られること数十分、黛さんに教えられて押さえた会場がある、都内でも有名な五つ星ホテルに辿り着いた。自分で押さえたのもなんだが、仕事終わりに一人で入るには立派すぎるホテルだ。

確か会場はこのホテルで一番大きな大広間だったと思う。とりあえずそこまで行けば彼に会えるはずだ。
しかし、ホテルに入るなり周りにいる人たちの服装を見て、自分が場違いであることが嫌というほど感じられた。

パーティーに参加するからか着飾ったドレスに身を包んだ華やかな女性たち。
それに比べて一日仕事をしてくたくたの私はメークも崩れたままで、灰色のスーツはホテルのラグジュアリーな内装からは浮いて見える。


「(これが身分の格差というやつか……)」


なるべく早く社長を見つけてこの場から離れたいところであるが。

と、


「田崎さん!」


そう私の名前を呼ぶ高い声が聞こえて、声がする方に目を向けるとこちらに向かって走ってくるのは可憐な桃色のドレスを着こなしている早乙女さんであった。


「よかった、見つけました」

「さ、早乙女さん?」

「は、はい。早乙女です」


彼女の登場に篠田くんから伝えられた話が急に脳裏を横切った。
ここに早乙女さんがいるということは、まさか本当に今日は彼と早乙女さんの結婚会見の日なのではないだろうか。

私らしくもない冷静さの欠けた想像に顔を青くしていると、彼女は「遊馬さんと会いました?」と尋ねてくれる。


「い、いえ。どこにいるか分かりますか?」

「さっきまで一緒にいたんですが……」

「早乙女さん?」


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