花を愛でる。
「言いたいこと纏めておくって言ったけど、実はそんなに纏まってないんだよね」
「それでは、聞きたいことがあるので私からいいですか?」
「え、なんだろう。怖いなー」
そう軽口を叩いているが、何処か思い当たる節がある顔をしている。
私もここに来るまで彼に聞きたいことを頭の中で纏めていた。聞き出したいことは沢山あるけれど、でも彼のことを思い出してからは一つの疑問で頭を占めていた。
彼は私のことを以前から知っていたのか。
「社長は、私が秘書になることが夢だったことを知っていたからご自分の秘書にしたんですか?」
「……どうだろうね。だけどあの時の俺はもう腹を括っていたし、出来れば女性関係で問題は起こしたくはなかった。だから君を選んだというのもある」
「それは私に女性的な魅力を感じなかったから、ということでしょうか」
「いや、俺が見込んだ君なら手を出さないと思ったからだよ」
まああの時の話だけどね、と彼は言葉を付け加える。
「少し自惚れていたんだろう。君が俺の言葉を受けて秘書を諦めずにここまできたのかって」
「……ということは、結局私は社長に夢を叶えていただいたということになるんですね」
「そうかな? そもそも花があの時に諦めるという選択を取らなかったら君は今ここにいないと思うけど」
そういうことだったのか。社長は初めの時から私があの時の学生で会ったことに気付いていたんだ。
何も知らない私はずっと彼の掌の上で踊らされていたということだ。
「最後の罪滅ぼしだよ。兄の期待も裏切って、雛子の人生も夢も奪って、最後に誰かの希望を叶えたかった。ただのエゴ。自己満足だ」
「……」
「軽蔑する?」
自分のしたことに対して嘲笑する彼に私は首を横に振る。