花を愛でる。
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次の出勤日、どうしても彼に会いたくはなかったが仕事上どうしようもなく、朝挨拶の為社長室に向かったときにすぐさま頭を下げた。
「先日はご迷惑をお掛けして誠に申し訳ありませんでした」
真摯な態度で謝罪をした私を彼は普段と変わらない表情で見つめていた。
「謝られるようなことをされた記憶はないけど」
「私がしたいだけなので。タクシーもありがとうございました」
「いや、女の子一人徒歩で帰らせるのも危ないから当然のことだよ。それと、」
自身の椅子から立ち上がると私の元へ近寄り、何かと思えば人差し指の甲で私の目元を擦った。
バーでの夜のことを思い出し、仕事中にも関わらず感情が波打つ。
「今度何かあった時は俺を誘っていいよ。その時は酔い潰れた後の介抱もしてあげる」
語尾にハートマークを付けたような喋り方に一瞬で仕事モードのスイッチが入った。
やはりこの人も他の男と同じなのか。どうして私の周りにはそんな男しか集まらないのか。
「今後一切、酔い潰れることも介抱されることもないので。失礼します」
「それは残念。田崎さんと仲良くなれたと思ったのに」
仲良く、か。私もこの人のような人付き合いをしていれば楽に生きられたんだろうな。
社長の微笑みに揺らぐことなく、そのままその日のスケジュール確認に移った。