花を愛でる。
穢れの一つもない澄んだ空気が充満している空間に一瞬気を取られたが、彼を中に運び込むと何とかベッドに寝かせることが出来た。
「台所お借りしますね」
水を汲んできてあげようと彼の傍を離れる。するとそれを妨げるように伸びてきた腕が私の服を掴んだ。
振り返るとベッドに寝転んでいる社長と目が合う。火照った表情とアルコールのせいで潤んだ瞳の影響で普段よりも妖艶な雰囲気を醸し出している。
彼が振りまく色香に目の前が眩んだ。
「苦しいからボタン外してくれない?」
窮屈そうに首を動かした彼に理性が働く。しかしボタンを外すくらいならと無防備な首元に両手を伸ばした。
酒に酔った彼を介抱するのも秘書の仕事の一環だと自分に言い聞かせながら。
シャツの一番上のボタンをプツリと外した。
「学ばないなあ」
しかし、次の瞬間には腕を掴まれ、ベッドの上に引きずる込まれていた。
至近距離で彼と見つめ合い、シーツの上で共有する体温は想像よりも温かい。
「こんなところまでのこのこ来て、襲われたいの?」
前にも似たようなことを彼に言われた気がする。確かあの時は私の方が酔っ払っていて。
だけど目の前にいる彼はどう見ても酔っているようには見えない。