花を愛でる。
「騙しましたね」
「どこまでついてきてくれるのかなって。何となく『秘書だから~』の精神で世話を焼いてるんだろうと思ってたけど」
「……私と寝ても、貴方にメリットはありません」
社長が普段から遊んでいるような容姿端麗な女性ではなく、人生に疲れた面白みのない女だ。
こんな女を抱いたところで彼に何が残るというのだろうか。
「メリットを感じないと君のことを抱けないんだ? 面白いこと言うね」
「……」
「残念だけど、俺はいちいちそんな難しいことを考えて女抱いてないよ」
そうでしょうねと呆れた感想が漏れ出る。どこか自分が冷めているように感じるのは、何処か彼が私のことを抱くことはないだろうと思い込んでいるからなのか。
「だけどそこまで言うなら逃がしてあげる。俺は優しいから、今すぐUターンしておうちに帰りな」
まるで子供をあやすように私の頭を撫でた彼はそっと掴んでいた腕を離す。
彼の傍いる女性と違って、私が彼の体目的で近付いていないということをちゃんと理解しているのだろう。
だからそうやって、自分に興味がない他人には「自分を警戒しろ」とわざとらしくアピールする。
手に入らないものには興味がない。最初から全てを諦めている人の目だ。
「可哀そうな人」
この人の心は、一体どこにあるんだろう。
「(あぁ、でも最初から期待していないのは……)」
私も一緒だ。