花を愛でる。
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それから会社に戻り午後の業務に励んでいるとあっという間に時間が経過した。
社長室でスケジュール帳を開いた私はその後の予定が白紙なのを知り、「珍しいな」と意外に思う。
「本日の仕事は以上になりますね」
「本当、今日は程よくのんびりしたなあ。今日みたいなのがずっと続けばいいんだけど」
「だとしたらこの会社潰れますよ」
そう冷たくあしらうと彼は「冗談」と椅子に座りながら上半身を伸ばした。
しかし定時に仕事が終わるなんていつぶりだろうか。この人はやることがないと直ぐに帰宅してしまうけれど。
時間に余裕があるし、今日は家に帰る前に本屋によって参考書でも漁ろうか。
「どうしたの? 帰れば?」
「あ、はい」
彼の言葉に我に返ると「お疲れさまです」とスケジュール帳を閉じて社長部屋を後にしようとする。
扉のドアノブを掴むとふと考え事をし、再度彼の方を振り返る。するとそんな私に一瞬驚いたような表情を見せた彼。
「どうかした?」
「……あの、」
お昼に黛さんに聞いても分からなかった彼のこと。裏でこそこそと嗅ぎ回るよりも、きっと理由を告げて本人から聞き出した方が早いような気がする。
この人の場合、基本的に私がやりたいことを否定する人ではないから。
「もし、また早乙女さんが会社に来られた場合どのように対応すればいいかなと」
「……」
「社長の婚約者であれば無碍には出来ませんし」