花を愛でる。
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「うちの社長結婚するって知ってるか?」
昼休み、同じテーブルの向かいの席に座っていた篠田くんの口からその話題が飛び出し、思わず食べていたサンドウィッチが喉に詰まりそうになる。
「は? そんな話どこから」
「なんだ、田崎もよく知らないのか。だったらこの噂はガセかな?」
「噂……」
突然彼から『昼に食堂集合!』というメッセージが届き、午前の仕事を片付けて来てみれば……
「というかその噂ってどこから?」
「まだそこまで広まってないけど主に人事の女の子が言ってたぞ。確か会社に社長の婚約者来たんだろ?」
「ああ、そういうこと……」
女遊びが激しいなどのマイナスの評価が噂されるよりもいいのかもしれないが、結婚となるとその噂が会社中に広まるのは時間の問題だろう。
しかし早乙女さんは社長との会話を思い出すにまだ21歳と若いし今すぐってわけではなさそうだが。
「俺もその話聞いたときは嘘だろって思ったんだけどさ、でも別の子から聞いた話を聞いて納得したというか」
「別の話?」
「実は社長、今全然女と遊んでないらしいよ」
「……」
それ、は……
「(なんとなく気付いていた……)」
今までだったら会社でも女性と約束の電話をしていた姿を今では見かけなくなったし、打ち合わせなどで訪れた会社の女性社員を口説くこともなくなった。
私が見ないところでやっているのかもしれないが、見ている範囲では彼が女性と接する機会自体が少なくなったと思う。
それもあの早乙女さんがここに来た日からずっとだ。あの日の社長室で何かあったのかは分からない。
「結婚の準備でもしてんのかなー」
「……」
篠田くんが私の前で彼の話をする中、気まずさを感じながら手にしていたサンドウィッチを食べきった。