囚われの胡蝶は皇帝の愛にはばたく
第一話
小さいながらも穏やかな国、江国に生まれた夢蝶。江国の王の一人娘で、遅くにできた子ということもあり、溺愛されて育つ。香を焚いた浄室で本を読んで過ごす夢蝶の唯一の友達は、窓辺に現れる珍しい小鳥。薄紫色をしたとても美しい羽色をしており、心躍る囀りを聞かせてくれる。
「あなたはどこから来たの?私はずーっとここにいるの。」
「いつか、物語のように私をここから連れ出してくれる方はいらっしゃらないのかしら……。」
そんな中、夢蝶が17の歳を迎えた頃、突然病に倒れてしまう。手を尽くすが回復の兆しが見られず、悲しみに暮れる夢蝶の両親。そこへ、隣国の大国・燕国から使いを引き連れた皇帝・天白本人が現れる。そこで天白は、夢蝶を妃に迎えたいと両親や夢蝶に告げるのであった。
第二話
突然の求婚に上へ下への大騒ぎになる江国。特に夢蝶を溺愛している父王は暗澹たる思いであったが、大国の皇帝が直々に現れたとなれば、断ったところで軍が控えているやもしれないと考え、泣く泣く夢蝶を天白に差し出すことになった。
病のある私をなぜ……。と思いながらも、初めて城の外に出る夢蝶。見るものすべてが初めてで、身体がつらいのも忘れて外に見入ってしまう。そして、それを不思議そうに見る天白。
「そんなに面白いか。」
「ええ、書物で読んだことを実際に見られて、私それだけで今は幸せですわ。」
「そうか……それはよかった。」
微笑む天白を見て、冷酷非道な皇帝という噂を聞いていた夢蝶は驚き、そして少し胸を高鳴らせるのであった。
第三話
燕国についた二人は、婚礼の儀の前に夢蝶の体調を回復させなければならないと医者に告げられる。夢蝶のためにさまざまな食べ物や薬などを試す天白。その甲斐あってか、夢蝶の身体はみるみる回復し、庭を歩けるほどになる。公務の合間を縫って、夢蝶との時間を作ろうと努める天白。全くの無口で不器用な天白であったが、庭を散歩しているときに見せる穏やかな表情と知識に富んだ言葉は、夢蝶の心をとらえていく。
「ここには珍しいお花がたくさん咲いているんですのね。」
「気に入ったか。」
「はい。とても。これも、これも……書物で読んだものばかり。」
「あなたは書物がお好きなようですね。」
「ええ、知らない世界を想像することができて、とても楽しいですわ。」
「それでは、あなたの知らない世界というのを、ぜひお贈りしたい。」
天白は夢蝶をやや強引に引き寄せて、口づけをするのであった。
小さいながらも穏やかな国、江国に生まれた夢蝶。江国の王の一人娘で、遅くにできた子ということもあり、溺愛されて育つ。香を焚いた浄室で本を読んで過ごす夢蝶の唯一の友達は、窓辺に現れる珍しい小鳥。薄紫色をしたとても美しい羽色をしており、心躍る囀りを聞かせてくれる。
「あなたはどこから来たの?私はずーっとここにいるの。」
「いつか、物語のように私をここから連れ出してくれる方はいらっしゃらないのかしら……。」
そんな中、夢蝶が17の歳を迎えた頃、突然病に倒れてしまう。手を尽くすが回復の兆しが見られず、悲しみに暮れる夢蝶の両親。そこへ、隣国の大国・燕国から使いを引き連れた皇帝・天白本人が現れる。そこで天白は、夢蝶を妃に迎えたいと両親や夢蝶に告げるのであった。
第二話
突然の求婚に上へ下への大騒ぎになる江国。特に夢蝶を溺愛している父王は暗澹たる思いであったが、大国の皇帝が直々に現れたとなれば、断ったところで軍が控えているやもしれないと考え、泣く泣く夢蝶を天白に差し出すことになった。
病のある私をなぜ……。と思いながらも、初めて城の外に出る夢蝶。見るものすべてが初めてで、身体がつらいのも忘れて外に見入ってしまう。そして、それを不思議そうに見る天白。
「そんなに面白いか。」
「ええ、書物で読んだことを実際に見られて、私それだけで今は幸せですわ。」
「そうか……それはよかった。」
微笑む天白を見て、冷酷非道な皇帝という噂を聞いていた夢蝶は驚き、そして少し胸を高鳴らせるのであった。
第三話
燕国についた二人は、婚礼の儀の前に夢蝶の体調を回復させなければならないと医者に告げられる。夢蝶のためにさまざまな食べ物や薬などを試す天白。その甲斐あってか、夢蝶の身体はみるみる回復し、庭を歩けるほどになる。公務の合間を縫って、夢蝶との時間を作ろうと努める天白。全くの無口で不器用な天白であったが、庭を散歩しているときに見せる穏やかな表情と知識に富んだ言葉は、夢蝶の心をとらえていく。
「ここには珍しいお花がたくさん咲いているんですのね。」
「気に入ったか。」
「はい。とても。これも、これも……書物で読んだものばかり。」
「あなたは書物がお好きなようですね。」
「ええ、知らない世界を想像することができて、とても楽しいですわ。」
「それでは、あなたの知らない世界というのを、ぜひお贈りしたい。」
天白は夢蝶をやや強引に引き寄せて、口づけをするのであった。