丸重城の人々~前編~
「今日初めて会ったから、教えといてやる。
俺、お前のような女嫌いだから!」
「え?中也、くん?」
今度は夏姫が呆気に取られる。

「柚希のダチだって言うから、この家に住むこと大目にみるけど、そうじゃなければ今すぐに退去させるぞ」
「あの…」
「早く出ていけよ!」
「なっちゃん。行こ…」
「うん」
この部屋に来た時と、正反対な雰囲気で出ていく夏姫。
「あとさぁ━━」
「え…」
「今みたいな態度で兄貴に話しかけたりしたら、自分が痛い目みるぜ!教えといてやる」
と後ろから、言い捨てた中也だった。


「なっちゃん?」
「私、部屋に戻る…」
そう言って、部屋に戻る夏姫。
すぐ柚希は中也の部屋に戻った。
コンコン━━━
「中也くん、ごめん。もう少しいい?」
「どうぞ」
「さっきはごめんね…なっちゃん悪気ないの…だから、わかってあげて?」
「なんで、柚希が謝るの?それにあの人、柚希のことバカにしてない?そうゆうとこも嫌だ!
俺だって、兄貴程はなくても柚希が大事なんだから」
「ありがと」

柚希にとっても中也は大切だ。
だって大翔と中也兄弟と響子、広子もだか、柚希の対人恐怖症をわかった上で、ゆっくり心をほぐしてくれた人達だから。
特に大翔と中也は“ずっと一人で生きていく、恋愛や結婚なんてあり得ない”と思ってた柚希に、諦めることなく真っ直ぐ向かってきてくれた兄弟だ。
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