丸重城の人々～前編～

｢姫は純粋なだけだよ？もちろん無自覚で無防備だから、男は勘違いするけど、翔への愛情はしっかりしてるから、それ以上は絶対踏み込ませない。
君が思っているような女じゃないよ！姫は。
それに君は卑怯だね。
話を聞いてると、翔か中也のことが好きなんでしょ？だったら、翔か中也にぶつかりなよ！姫に嫉妬心をぶつけるなんて卑怯だよ！｣
静かに玄が、利奈に言う。

｢お前、もう出ていけ！
顔も見たくない……｣
大翔が悲痛に顔を歪め言う。
｢え？オーナー…？
でも私、オーナーが……｣
｢俺が愛してるのは、柚だけだ。
柚以外の人間がいなくなってもいい位。
好きすぎて、壊しそうな位。
もし柚が受け入れてくれるなら、家に監禁して誰にも会わせたくない位に｣
｢オーナー…｣
｢だから、もう消えろ！柚を傷つける人間はあの家にはいられない。それが丸重城のルールだ｣
｢そうだ。あの家は柚希が中心なんだから｣
大翔と中也の力強い言葉が響いた。

利奈はガックリ肩を下ろし、その場を去った。
｢柚…もう大丈夫……｣
頭を撫でる、大翔。
｢大翔…｣
｢ん？｣
｢キスしたんでしょ？｣

｢は？｣
みんなの声がハモる。
｢利奈さんと、キスしたんでしょ！？｣
｢兄貴！最低だな！｣
｢大！ちょっと殴らせて！｣
｢翔。いくらなんでも酷いよ！そんなことするなら、姫をちょうだいよ！俺の方が絶対幸せにできる｣
｢ちょっと待て！！誤解だ！
柚！そんなのあり得ない！｣