丸重城の人々～前編～

｢はい。ママから聞いてます。よろしくお願いします｣
と握手を求められた。
｢あ…ごめん、なさい…握手はちょっと……｣
｢あ、そっか。そうでした。では｣
｢ふぅ…｣
｢柚希、大丈夫？｣
｢あ、篤子ちゃん。ごめんね…。
私、帰るね！｣
｢でも、一人で大丈夫なの？｣
｢あ、お迎えに来てくれるから、平気だよ｣
｢そう？じゃあね！｣

｢柚希！｣
｢中也くん、ごめんね。お迎え｣
｢全然！むしろこれから送り迎えできるんだから、楽しみな位……｣
｢………｣
｢柚希？｣
｢中也くん、いいんだよ？断ってくれて｣
｢え？なんで？｣
｢私鈍感だから、中也くんを傷つけてるかもしれないでしょ？私、中也くんに甘えてるから…｣
｢利奈に言われたこと、気にしてるの？｣
｢……うん｣
｢だったら、言わせて？｣
｢うん｣
｢もっと甘えて？｣
｢え？｣
｢むしろもっと甘えてほしい！｣
｢どうして…？私、きっと中也くんの気持ちに答えられないよ…？｣
｢それでも、柚希に頼られたい。
傍にいたい！｣
｢中也くんって…バカだよ……｣
｢バカでいいよ？柚希の傍にいられるなら……｣

それから三ヶ月経った。
｢お疲れ様でした｣
｢あの、柚希ちゃん！｣
｢はい。三島さん、何ですか？｣
｢ちょっと話したいことがあって、今日送らせてもらえませんか？｣
｢え？はい、じゃあ中也くんに一言連絡しますね｣
中也に、連絡し三島と店を出た。