丸重城の人々~前編~
「柚は隠し事できねぇもんな…!」
「悔しい!勝ちたいのにぃ」
「柚希には無理よ!」
「どうして?響ちゃん」
「中も言ってるでしょ?純粋過ぎんの!」
「まぁ、そこが柚希ちゃんのいいとこでしょ?」
「将大さんまで……。
もう!!」
柚希は、目の前にあったお茶を一気飲みする。
「あっ!こら、柚!それ…ウイスキー……」
「え…お茶じゃな━━━━」
途端に目の回る柚希。

「柚!?」
「柚希(姫)(柚希ちゃん)!!」

ソファーに横になっている、柚希。
「…たく、なんで柚希の手の届くとこに置いとくのよ、大」
「たまたまだよ!まさか柚が飲むと思わねぇだろ!?」
「とにかく水を……。
柚希、水よ。飲んで?」
「やだ……頭痛い!気持ち悪い!」
「でも酔いを覚まさないとでしょ?」
「や!大翔ぉ…ギューしてぇ?」
両手を広げて、大翔にすがる柚希。
「お、おう…おいで?」
「頭痛いよぉ…気持ち悪いよぉ…。
大翔…よしよしして?」
「うん…」
頭を撫でる。
「柚、少しでいいから水飲も?」
「じゃあ…飲ませて?」
「え?」
「チューして、飲ませて?」
「ちょっ…柚…?」
無理やり、大翔の口唇を奪う柚希。

呆気にとられる、一行。
こんな姿、誰も見たことない。

「これが…柚希?」
と響子。
「姫って甘え上戸なの?」
と玄。
「可愛い~、柚希ちゃん!」
将大が片肘をついて言う。
「いいなぁ~兄貴」
羨ましそうに言う、中也だった。
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