丸重城の人々~前編~
それから大翔と将大は、仕事へ。響子と玄も夜の仕事の為、一度寝るために部屋に行く。
「何かあれば、起こして大丈夫だからね。姫」
「はい…」
「私も、起こしてね!柚希」
「うん」
「大丈夫だって!俺がいる!」
頭を撫でる、中也。
「うん…」

でも不安が拭えない、柚希。
「中也くん…部屋に一緒にいていい?」
「もちろん」
心なしか落ち込んでいる柚希。
「大丈夫だよね…?」
「大丈夫だって!
とりあえず、なんか見る?TV」
「……うん」
中也の服を握る。
「柚希?」
「怖い…あの時みたいになったら……」
あの時みたいとは、まだ柚希が兄弟と出逢った頃のことだ。
色々な連中が、兄弟にしかけようと柚希を人質にしていた。
大翔と付き合うようになっても、それは益々酷くなり、その事で病気も悪化する一方だった。

「柚希、ちょっとだけごめんな…」
「え?」
中也が柚希を優しく抱き寄せた。
背中をさすりながら、
「大丈夫…もうあんな怖い思いはさせないから…」
と落ち着かせた。
「……うん」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そしてある日の朝。
「うーん!あっもう6時だ!起きなきゃ!」
広子がいないので、今は柚希が一人で家事をしている。
もちろんみんなそれぞれ手伝ってくれるが、基本的には一人でおこなっている。

庭に出て、郵便受けを覗く。
「誰もいないよね…?」
一応誰かいないか確認して、庭に出る。
敷地内とはいえ、油断はできない。

「え━━━━」

【やっと見つけた。柚希】
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