丸重城の人々~前編~
「キャッ!」
思わずその場に落とす。
もう一度その紙を震える手で拾った。
「何…?誰?これ……」

みんなを、起こして今ダイニングにいる。
アイランドキッチンから、みんなを見る。
今ここで、あの手紙を見せて“助けて”と言えばみんな揃って、助けてくれるだろう。
それこそ、命懸けで。
でも、私も自分の身は自分で守らないといけない。
いつまでもみんなに頼ってはダメだ。

「とにかく、意識を強く……」
「柚ー。食おうぜ!」
「うん」
大翔の横に座る。
「では。いただきます!」
でも、なかなか端が進まない。
「柚希?どうした?」
中也が心配そうに、顔を覗く。
「姫、心配事?」
「柚希ちゃん、大丈夫だよ!定期的に俺の部下に見回りさせてるから」
「柚、今日もすぐ帰ってくるから、中也と留守番してろよ?」
「うん」
「俺も何かあれば、すぐ起きて助けるよ!姫」
「はい、みんなありがとう!」


「じゃあ柚、行って来る」
「大翔…少しだけ…ギュってして?」
「もちろん」
よし。これで今日は頑張る!
大丈夫……。
「ありがとう。気をつけてね」
「柚?なんかおかしい…何があった?言って?」
「何も!早く行かなきゃ、遅れるよ?」
ここままじゃ、涙が……

柚希は無理やり、大翔を押して外に出した。
「ふぅー」
「柚希?」
「中也くん」
「今日は買い物だよな?」
「あ、うん」
そうだった……外怖いけど、そんなこと言ってられない!
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