丸重城の人々~前編~
「フフ…だったら遠慮なく……!」
ライターを取り出した、忠司。
「燃やす気?」
「そう。この家全部。柚希を汚したこの家全部だよ?」
「やれば?」
余裕の大翔。
「は?」
「フッ!だから、やれば?」
中也もこれと言って焦っていない。
「無理だろうと思うけど……」
「だろうな!」
玄と将大も。静観して見ている。

「じ、じゃあ…やってやる!」
ライターに、火をつけた忠司。
「シン!今だ!!」
将大の声が響く。
「え…?」
シンが忠司を押さえつけた。
「くそぉぉぉー!!」
大翔等が忠司に近づく。
「てか、後ろ…全然気づかなかったのかよ!
次は…俺達と遊ぼうな…!」
ずっと将大の部下がタイミングをはかっていた。
「ひっ!」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
大翔の部屋のベランダの手摺に括りつけられた、忠司。かなり殴りつけられ、ぼろぼろだ。
「こんな奴が…俺の柚を…」
ガン━━!!
「あがっ…!」
尚も殴る大翔。
「吐き気すんだよ……お前のせいで柚希があんなに震えて……」
ゴン━━!ガン━━!
「うっ!」
中也も殴る手が止まらない。
「姫、怖かっただろうな…かわいそう……」
「これも…。普通ならとっくに自殺してるよ…。
柚希ちゃんは強いなぁ」
玄と、将大が例の手紙を忠司に投げつけ、言う。

「ずっと震えてたんだせ…柚。毎日抱き締めてても、全然安定しなくて、ずっと震えてた。理由を聞いても“大丈夫”しか言わないし……」
「買い物行っても、ずっと震えておどおどして……。柚希、俺の服しっかり握りしめて離さなかったんだよな…!ほんとは嬉しいはずなのに、俺も苦しかったなぁ」
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