丸重城の人々~前編~
ダイニングに戻る、市子。
「あれ?柚希は?」
と中也。
「どうせ、大が起きないんでしょ?将大、叩き起こしてきて!」
と響子。
「了解~!じゃあ口の中にピーマンお見舞いするか!」
と将大。
「フフ…やめてあげてよ?姫が悲しむよ!大翔にそんなことしないでーって!」
と玄。
「じゃあダメだな!柚希ちゃんには、嫌われたくない!」
「いや…違うんです。
柚希さんが、なかなか起きなくて……。
大翔さんは起きてます!」
「え?姫?」
「珍しいわね?」
「だな。柚希ちゃんが起きないなんて……」
「兄貴、また寝かさなかったんじゃ……」

「でも、姫が起きないんじゃ、待ってなきゃね!」
「柚希、ここんとこ色々あったし、家のこと全部やってくれてたもんね……。もう少し寝かせてあげなきゃね…!」
「確かに。柚希ちゃん、頑張ってたもんな!」
「それなのに、兄貴のやつ……!!!
柚希がかわいそう……」
「でも、中也。
姫が横に寝てて、何もせずにいられる?」
「………無理だな…」
「だろ!?俺にも無理だ…!」

てか、なんなの?これ?
大翔さんも“柚が起きないっつたら、みんな納得するから!”と言っていた。
確かに急に、何も文句を言わなくなった、一行。

「フフ…びっくりでしょ?この子達」
広子に声をかけられる。
「この家には暗黙のルールがあってね。
とにかく、柚希ちゃんが中心なの」
「え?」
何?そんなに特別なの?
あの人………
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