丸重城の人々~前編~
「あ、あれにする!奥の黒の…」
「あーあれね。了解」
店員を呼び、包んでもらう。
「あ、あの…後あれも!」
「え?」
「あのピックケース。それも別に包んで下さい…」
「こちらですね」
「あ、はい…」
中也の後ろに隠れ、震えながら答える柚希。
「え?なんで?兄貴、ギターひかないだろ?」
「あれは、中也くんに。今日のお礼だよ!」
「柚希…マジで…?」
「うん。受け取って!良かった。何を贈ろうか考えてたの。ちょうど中也くん、見入ってたから」
そう言って、フワッと笑った。
なんか心、持ってかれそう。

ショップを後にする、柚希と中也。
「ほんと今日ありがとう!」
「いや、こっちこそ!お礼貰ったし。大事にする!ありがと。でも兄貴嫉妬するな(笑)」
「そうかな?」
「うん。兄貴、独占欲強いから…」
「フフ…でも、お礼だし」
「……ねぇ。
手、繋がない?」
「え?」
「人多くなってきたし、服握るだけじゃ不安でしょ?」
そう言って、手を出す中也。
「うん、ありがと」
特に何の感情もなく、手を握る柚希。
柚希のせいにしたが、ほんとは純粋に触れたかった。

この位、いいよな?
兄貴。


家に帰り着き、ベットにダイブする中也。
先程、柚希と繋いだ手を見つめる。
「なんか…手、洗いたくねぇな……」

…って、俺…キモッ!!
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