丸重城の人々~前編~
「ん…」
「あっ柚希…」
「響ちゃん?」
「柚希ちゃん、わかる?ここ病院よ」
「広子さん…私」
「倒れて、近くにいた方が救急車呼んでくれたのよ」
広子がゆっくり話しかける。
「そうですか…あの、大翔は?」
「大丈夫。もうすぐ来るわよ!」
頭を撫でながら、言う響子。
タタタタ…………
「ほら、来た!」
「ちょうどよかったわね!」

バン━━━━!!
「柚!?」
「柚希!」
「大翔…中也くん……」
響子と入れ代わり、ベット脇の椅子に座る大翔。
「柚…ごめん…遅くなった……」
今度は大翔が柚希の頭を撫でる。
「ごめんなさい…心配かけて…。
中也くんも、響ちゃんも広子さんも…。ごめんなさい」
「夏姫が悪いのよ…ごめんね…柚希。
私のせい…」
響子が目を伏せ、悲しそうに言う。
「それは違う!響ちゃんは全然悪くないよ。お願い、そんな風に言わないで?」
「柚希…」

「さぁ点滴が済んだら帰って大丈夫みたいだから、焼肉弁当買って帰りましょ!」
広子が明るく言う。
「マジで!?あの駅前の?」
「そうよ!私のお、ご、り」
「さすが、広さん!」
「フフ…楽しみ」
柚希に漸く笑みが出た。

「柚、可愛い…。
ねぇチューしていい?」
「え…?」

「いい訳ないでしょ(だろ)!?」
中也、響子、広子ハモる。
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