丸重城の人々~前編~
「おい!まだかよ!中也。もっととばせよ!」
途端に機嫌が悪くなる、大翔。
ダッシュボードに足を乗せ、かなり態度が悪い。
「兄貴。いい加減にしろよ!足下ろせや!」
「あ?お前がスピードおせーんだよ!」
「柚希に拒否られたからって、こっちに当たんなよ!」
「うるせー、黙って運転しろ!?」

「二人ともやめなさいよ!柚希、震えてるわよ!益々寄って行かないと思うわよ?」
「え?」
「柚、ごめんな…」
「柚希!わりぃ…」
「てゆーかさ、柚希はなんで拒否ったの?」
響子が言う。
「え…」
「まぁなんとなく想像つくけど…。
要するに、ヤキモチ妬いたんでしょ?」
「え?響ちゃん!」
「やっぱそうだ!可愛い~柚希」
「ち、違うよ!」
「なんだ?柚、ヤキモチって何?」
「フフ…柚希、教えてあげたら?そしたら大、機嫌がよくなるだろうし…」
響子が笑っている。
「何?柚?」
「………」
「俺も知りたい!柚希、教えて?」
中也もバックミラー越しに話す。

「二人ともさっきの逆ナン女達の香水が移ってて、柚希ヤキモチ妬いたのよ!」

「え…?」
兄弟はすぐさま、自分の匂いを嗅ぐ。
「ちょっ…響ちゃん!言わないでよ……」
「だって可愛いんだもん!」
「マジかよ!待って!すぐこのTシャツ脱ぐ!つうか、脱いで捨てる!だから横、座っていい?」
「うん…それなら…」
「マジ!?おい!中也。車止めろ!今すぐ!」
「無理だろ!もう少し我慢しろよ!もうすぐ着くからよ!」

「残念でしたぁ。大」
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