丸重城の人々~前編~
「フフ…やっぱ大翔の匂い大好き……。
さっきごめんね…大翔の匂い消えちゃって、女性物の香水の香りがしたから、嫌になっちゃったの……」
「いや、俺が柚を傷つけたから…ごめんな……」
「ううん…」
その姿を物欲しそうに見ている、中也。

「中也くん…?」
「どうだ!羨ましいだろ~!」
大翔がどや顔で言う。
「羨ましい?
大翔、羨ましいって何?」
「フフ…柚希に抱き締めてほしいのよ、中」
響子が口を挟む。
「フフ…いいよ!中也くんも!」
「は?ダメだろ!?柚」
「いいじゃん、抱き締める位…!」
そう言って大翔から離れ、中也の胸に抱きつく。
「柚希…」
震える手で抱き締め返す、中也だった。

「おい!もういいだろ!?離れろ二人!」
大翔が二人を引き剥がし、柚希を腕の中に閉じ込めた。

「フフ…おもしろいわね!あなた達三人。
早く浜辺歩こうよ!」
「うん!行こう!大翔、中也くん」

浜辺を四人でゆっくり歩く。
大翔と柚希は手を繋ぎ、歩いている。
「気持ちいいね~」
穏やかなゆっくりとした時間が流れる。

一通り歩き、部屋に戻る。
「柚希、ロビーの方にお土産屋さんがあるみたいだけど、行く?もし怖ければ、私が見てくるけど…?」
「大丈夫だよ。行きたい!広子さんに何か渡したいし」
「だったら、俺達も行くか!」
四人でロビーへ。
< 40 / 162 >

この作品をシェア

pagetop