丸重城の人々~前編~
「ただいま、柚」
「おかえり」
いつものように抱きつく、大翔。
「んー。癒されるー」
腕の隙間から、こめかみや頬にキスをする。
「大翔…やめ…くすぐったいよ…」
「やだね…柚が可愛いから悪い…」
「兄貴!やめろよ!」
「なんだよ、ヤキモチ?中也くん(笑)」
大翔のどや顔での言葉。
「うるせーよ///!」
図星のようだ。
「柚、中也がうるせーから部屋行ってイチャイチャしような…!」
柚希の手を引き、部屋に行く大翔。

「…ったく」
「中也さん、柚希さんが好きなんですか?」
「は?」
「見てたらすぐわかります」
「だったらなんだよ?」
「寂しくならないんですか?好きな人がこんな傍にいて、しかも他人のモノじゃないですか?」
「そりゃ、ヤキモチ妬くことあるけど、これはこれで幸せだけど!」
「そんなものですかね?」
「俺のモノじゃなくても、傍にいれるだけで今はいい。
それに、ほんとに辛くなったらその時考える!」
「奪いたいとか思わないんですか…?」
「奪うのは簡単だけど、それは大切な柚希を傷つける事になる。それだけはしたくない」
「そっか…」

その頃の大翔と、柚希。
ソファーに座り、大翔が後ろから柚希を抱き締めている。
「柚…可愛い……顔真っ赤だな…!」
「なんか恥ずかしくて…」
「早苗はどうだった?何かされてない?」
「ううん。色々話をしたよ」
「そっか…よかった」
「大翔が素敵だねって!」
「そう?」
「うん。私にはもったいない位って答えたよ」
「それは俺の方だろ?」
「どうして?」
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