丸重城の人々～前編～
｢失礼します…｣
｢え？早苗さん？｣
もちろん二人が悪い訳ではない。
完全な嫉妬だ。

早苗は部屋に入り、乱暴にバックを壁に投げつけた。
｢なんなのよ！なんで……｣
なんで柚希は、あんなに愛されているのだろう。大翔だけでなく、中也にまで。
病気とはいえ仕事もせず、家の中でのほほんと過ごしている、柚希。
羨ましくて堪らないのだ。
私はあんなに尽くしてきたのに…

食欲がないので、夕食は断り自室にこもる。
ふと思い立ち、大翔達の部屋に勝手に入った。
今は大翔と柚希、中也も夕食中だ。

そこには、甘ったるい匂いが染み付いている気がした。
大翔と柚希のツーショットの写真。
そのどの写真も、仲良くぴったりくっついている。
キスをしていたり、抱き締めあっていたり。
ウォークインクローゼットが目に入る。
吸い寄せられるように、中に入った。

｢スゴッ！｣
大翔がカフェのオーナーだけある。
高そうな服やアクセサリーがたくさんあった。
｢あっこれ、律が欲しがってたやつだ。
あ、これって…限定のネックレス……｣
なんで…柚希だけ……。
また変な嫉妬心が顔を出す。
無意識に、大翔と柚希のネックレスを取り部屋を出ていた。
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