丸重城の人々~前編~
ガチャ━━━━
「ただいま…」
明け方近く、響子が帰ってきて来た。
そのまま大翔達の部屋を開ける。
当然のことながら、二人は眠っている。
大翔は取られないように、柚希を抱き締めている。
まるで宝物を抱えてるように。

響子はフフ…と笑い、音をたてないように近づき、
「柚希…ありがとね……おかげでいいパーティーだったよ…!」
と頭を撫でた。

「てか、柚希の身体…キスマークスゴッ!
どんだけ、独占欲強いのよ…大」
少し苦笑いをしながら、部屋を出た。

「あれ?響子、おかえり」
「あ、中。ただいま」
「なんで?兄貴の部屋?
それにその服……柚希の大事なドレスじゃん!いいのかよ!着ても…」
「ちょっと訳あってね……」
もちろん中也も、このドレスの意味を知っている。
響子は事情を説明した。

「………そうゆうことね!
でもなんかおかしいよな…?最近。
兄貴も前に柚希にプレゼントされたアクセが、見当たらないって騒いでて、でも次の日には見つかったって言ってたんだよな……」
「そうよね…なんか怖いね…まさか泥棒?」
「まさか俺等兄弟がいて、お前もいんだそ?あり得ねぇよ!それに泥棒なら、ないまんまだろ?」
「だよね…」
「まぁでも、警戒は必要だな…。柚希もいるし…」
「そうね!」

それから響子も部屋に戻り、着替える。
柚希のドレスは傷つけないように、壁にかけた。
「クリーニングして、返さなきゃ!」

朝なり、早苗が帰ってきた。
「あら、早苗さんおかえり」
「広子さん、すみません。朝帰りなんて…」
「いいのよ、基本的には自由なんだから。でも朝食はできる限り、みんな一緒ね!」
「はい。一度部屋に行って、すぐダイニングに行きます」
そう言って、部屋に戻る早苗だった。
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