丸重城の人々~前編~
「この子は私の親友。で、花井 柚希。
病気で人と話すの難しいの。
気安く近づいたり、話しかけないで!」
「柚希……」
「可愛い…柚希だって!」
大翔と中也の様子がおかしい。

「あんた等、何?なんか変……」
「おい!やっぱ組むのは決定事項だ!響子」
「は?」
「柚を俺の女にする!」
「はぁ?あんたバカ!?
今言ったじゃん!柚希は━━━━」
「その病気、俺が治してやる!」
「俺も!柚希を俺の女にしたい!」

「はぁー。あんた等、柚希の病気のこと何も知らないじゃん!」
「だったら教えろ!その病気」
「柚、俺が絶対治してやる!」
「柚希!俺に任して!」

これが、出逢い。
大翔と中也は毎日柚希の元を訪れ、少しずつ心を溶かしてきた。
そして出逢って、三年程たった頃。
「だいぶ、慣れてきてくれたみたいだな」
「うん…」
大翔と中也だけには、目を見て普通に話せるようになっていた。
「柚。もうそろそろ、俺か中也か付き合う相手を決めてほしい。もちろん、俺も中也も一生大切にするって誓う!」
「一生?」
「そう、一生!
俺と一緒に幸せになろう!」
大翔の力強い言葉。
「………」
「柚希?俺達がまだ怖い?」
中也の優しい言葉。
頭を振る、柚希。
「私、こんなだよ?一人で外に出れないし」
「うん」
「仕事もできないし」
「うん」
「今は響ちゃんに養ってもらってるような女だよ?」
「うん。今後は俺が養ってやる!」
「俺は仕事してないけど、柚希の為ならバイトでも何でもする!」

「どうして?」
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