丸重城の人々~前編~
「だって柚希は私と響子がいたから、目立ってたようなものでしょ?」
「うん、そうだね」
確かにそうだ。
夏姫と響子は、スタイルもよく綺麗だ。
それに比べて、柚希は小柄で幼い印象をうける。
大翔と並んでても、大翔より年下に見られる位だ。
夏姫は昔から少し他人を見下すところがある。
悪気はないのだろうが、柚希はこんな夏姫に結構傷ついてきた。

コンコン━━━━
「んー。誰ー?」
「あ、柚希だよ。中也くん、少しいい?」
「OKー!」
今、作曲中だったのだろう。中也はギターを片手にソファーにあぐらをかいて座っていた。

「中也くん。昨日話した山野 夏姫ちゃんだよ」
「山野 夏姫です。中也くんだよね?よろしくねー」
びっくりした。先程の柚希ヘの態度と180度違う。
呆気に取られたように見る、柚希。

「あー。初めまして。柚希の義理の弟の中也です」
少し面倒くさそうに答える、中也。
「歌手志望なんだってね?どんな曲書いてるのー?」
嫌そうに眉間にシワを寄せる、中也。でも夏姫はお構い無しに、話しかける。
「私にも聞かせてぇ!ギターひいてみせてよぉ」

「なっちゃん!もう向こう行こ。お茶でも…」
柚希はなんとか引き剥がそうとする。
中也はこんな風にされるのを嫌うからだ。
「え~いいじゃん!でも別に、柚希は戻っていいよ?」
「え?でも…」

「お前も向こう行けよ…」
「え…?」
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