丸重城の人々~前編~
「柚希さん、お風呂終わりました」
「あ、はい。じゃあ次は全体のお掃除を。
響ちゃんと玄さんの部屋以外をお願いします。響ちゃんと玄さんは今寝てるので……」
「はい、わかりました」
「すみません。こんな態度で……」
なかなか目を見て話せない柚希。
「大丈夫です。ちゃんとお話聞いてますから!気にしないで下さいね」
そう言って、掃除にとりかかった。
まず、利奈は大翔夫婦の部屋に入る。

「ここがオーナーの部屋か……」
利奈はソファーにかけてあった、大翔のパーカーに目をつけた。
「オーナーの匂い…」
利奈は密かに大翔に想いを寄せている。
だから今回の話もチャンスだと思っているのだ。
利奈もそれなりの美形。
もしかしたら、奪えるかもと。

今日は昼からのバイトの為、掃除を終えると
「柚希さん、もうすぐバイト時間なのでぬけていいですか?」
「はい。もちろん!
気をつけてくださいね!行ってらっしゃい」
「行ってきます」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それから一ヶ月程たった頃。
「里山さん、最近オーナーと仲いいね」
「まさか不倫(笑)?」
「んな訳ないじゃん!オーナー、奥さんにベタ惚れよ!」
「だよね~(笑)」
利奈はなんとも言えない気持ちで聞いてた。
< 92 / 162 >

この作品をシェア

pagetop