丸重城の人々～前編～

見ていらなれなくて、部屋に戻った利奈。
｢なんなのよ……｣
あんな甘いオーナー、見たことない。

【オーナー、奥さんにベタ惚れよ！】
そんなこと見ればわかる。
でも諦められない━━━━━━
抑えきれないほどの想いがあった。

その日はなかなか寝付けず、なんとなく部屋の外に出た。
キッチンへ飲み物を取りに行こうと、下へおりた。
一階におりる途中、先程のまま大翔達の部屋のドアが開いていた。
見ても嫉妬するだけなのに、覗いてしまう。
二人とも眠っている。
無意識に、中に入ってしまった。
大翔が柚希をしっかりと抱き締めている。
誰にも柚希を取られないように。
シーツから出ている柚希の身体には、キスマークがたくさんついていた。
柚希が大翔のモノだと主張しているように。
大翔が柚希のモノだと主張しているように。

今引き剥がして、代わりに横に眠りたい。

｢……ってバカみたい、私｣
部屋を出た。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
今日は利奈のバイトは午前中のみで、帰ると大翔だけがいた。
大翔は今日は休みだ。
あまり体調がよくないとのことで、家でゆっくりしてるみたいだ。
柚希は中也と買い物。
響子と玄は仕事に出ている。

二人っきりで少し緊張する、利奈。

｢じゃあ俺、寝るから！｣
｢はい｣
なんだ、寝るのか？
つまんないなぁー。