生きなさい<短編>


身体が震える。


もう声は出ない。


枯れたと思った涙は


やっぱり枯れることなく流れ続けた。



周りの人にかかえられて

お通夜へ向う。



入口の前に立つと


彼の遺影が
満面の笑みでこっちを見ていた。


呼吸ができない。


神様

あの人を返して

私に返して。




受付の隣り

彼の家族が横一列に並んで

参拝者、一人一人に泣きながら頭を下げていた。


彼とそっくりなお父さん。

立って居られずに座り込むお母さん。


彼は
家族と折り合いが悪い

そう言って

家族に会わせてはくれなかった。


彼はじゅうぶん
愛されてた。

そう思うと、少しだけ安心した。




ふと

彼のお母さんの隣りに目をやると


若い女の人が

子供を抱いて泣き崩れていた。

手は、もう一人の子供と繋がれていた。





まさか‥
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