ぽっちゃり令嬢に王子が夢中!
綺麗なお城で、綺麗なものに囲まれて、王妃の身の回りのお世話をしながら、平和に暮らしている。

そして度々、王妃が私におやつをくれる。
最高だ。

王妃が自国から呼び寄せたコックも、とっくに私の顔を覚えていた。


「やあ、イーリス。来たね」

「お疲れ様。王妃様がマフィンをくださるって」

「ああ、聞いてるよ。それとこれは味見の分。鴨のソテー田舎風。食べるかい?」

「ええ、ぜひ!」


そして幸せいっぱいにおやつを頬張っている時、彼が現れた。

戸口から金髪が覗いた瞬間、空気がキラリンと音を立てた気がした。
第二王子ヨハンだった。

私は、鴨と玉ねぎを口の端から垂らしたまま、息を止めた。


「殿下! どうされました!?」

「えっ、殿下!? ほんもの!?」

「なんで!?」


厨房は騒然となった。
ヨハン王子は朗らかな笑みを浮かべ、踊るように中に入ってくる。
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