ぽっちゃり令嬢に王子が夢中!
母の雇った男は宮廷の婦人に満遍なく貼りつき、見事に管理していて隙がなかった。顔がいいせいで、現れたとたん婦人たちの信頼を総なめしていて、本当に隙がない。
夜更け、イーリスの枕元への捧げものさえ、叶わなかった。
奴が、門番よろしく扉の脇にいた。椅子を置いて、足を組み腕組みをして居眠りしている。と思ったら僕をギロッと睨んだ。
「お前は吸血鬼か!」
「シーッ。殿下、安眠妨害は暴力です」
「く……っ」
なるほど、わかった。
母は、イーリスに僕を近づけない件について、本気だ。
「ママンめ……!」
「おやすみなさい、ヨハン殿下。よい夢を」
男がシッシッと、手を振った。
惨敗だ。