ぽっちゃり令嬢に王子が夢中!
イーリスは政務官の父親からなにも受け継がなかったようで、実に愚鈍な乙女だった。ただ素直で心優しく、清らかだった。私は無垢な乙女の虜になった。
国政を牛耳るレントリ卿の娘という事で、彼が王権を掌握する戦略のひとつではないかという噂が立ったものの、そんな事はありえなかった。私もレントリ卿も、政略と愛憎の渦にイーリスを入れない事で心の安らぎを得ているのだから。
「イーリス」
「はい、王妃様」
宝飾品を整理する手を止めて、白くてふわふわの可愛いイーリスがふり向いた。
あの無垢な目で見つめられるたび、心の澱がサーッと押し流されていく。