ぽっちゃり令嬢に王子が夢中!
ちょん、と私を立たせると、王子が懐を探った。
「……ッ」
いつも甘い笑顔で甘いお菓子をくれたヨハンコックではない、真剣な表情。
私は無礼にも王子の顔をじぃーっと見あげてしまった。
「今日はこれを持ってきたんだ」
「え」
王子は指の間に小さな小瓶を挟んでいた。
「君がこの間、あの医者の背中をくんくんしていただろう? これは僕が、君のイメージを調香師に伝えてブレンドしてもらった香油だ。イーリス。〈イーリス〉だ」
「……殿下」
王子の手には小さくても、小瓶は私の手にはずっしりと重かった。
「嗅いでみて」
王子が囁く。