ぽっちゃり令嬢に王子が夢中!
2 甘い香りに誘われて
「……」
「どうしたの、イーリス? 鼻がひくついているわよ」
「美味しい匂いが……」
王妃の宝石箱を整理しながら、私はゆっくりと顔を巡らした。
侍女仲間たちは溜息をついて黙々と作業を続けている。
「手がお留守よ」
「もう、貸して。食べても困るし」
「……いい匂い」
猛烈な誘惑だった。
今までこんな事はなかった。
なぜ今日、王妃の部屋の近くにこんな甘い匂いが漂ってくるのか。
「近づいてくる……!」