○●雨色ドレス●○
 
……これってもしかしてもしかすると
 
 
 
中年男の前には、さっきホームにいた女子中学生が顔を真っ赤にして、下をうつむいていた。人混みで断言はできないけどあの手の位置、明らかに不自然。
 
 
これ、もしかしてもしかするとちかんチカン痴漢?????
 
えっ、周りのやつは気づいていないのか?んなわけないよな、いくら混雑してるからってな。
 
 
……でも誰かが助けるよな。こんだけ男がいれば、誰か一人くらいは。

僕が言わなくても誰かが……
 
 


だけど一向に、誰一人としてそれを止めようとする奴はいなくて、「腐った世の中だ」と心の中でつぶやいたけど、女子中学生と目があって、とっさに目線を反らした僕こそ一番腐ってると、自分で自分に突っ込みをいれた。
 
『次は、三鷹~三鷹~』
 
車内アナウンスがのほほんと流れる。よし、三鷹に止まったら言おう。絶対に言おう。あいつの肩を掴んで、大きな声で言うんだ。
 
 
「てめぇ、クソみたいなことしてんじゃねえよ!」
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