○●雨色ドレス●○
「なんだよそれ」
 
「今から母ちゃん着替えるんだからね。うっかり誰か入ってきたら恥ずかしいじゃない。レディーファーストよ」
 
母ちゃんは両頬を手で覆いながら、くねくねと照れていた。
 
「はいはい。ん……あれ?」
 
休憩室の入り口にタイムカードリーダーがある。何枚かあるタイムカードのうち、父ちゃんと母ちゃんと婆ちゃんと僕(いつの間に作ってたんだ!?)は勿論知ってる名前。

 
だけどあともう二人、知らない名前が書いてあるカードがささっていた。

確かに家族4人だけでコンビニ経営なんて、いくら都心から離れてる日野だからってハードすぎる。そりゃ、バイトの一人や二人雇わないといけないよなぁ。

片方は『千葉 陽介』という男だ。タイムカードからじゃ年とかどんな奴かは分からないからなぁ。変な奴じゃなけりゃいいな。まぁ十分うちの両親の方が変だけど。
 
 
 
そしてもう片方は……えーっと。
 
と、……えっ?
 
まさか
 
いや、冗談だろ。
 
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