○●雨色ドレス●○

そして、決してお世辞でも上手いとは言い難い口笛を、夏空へ向けて、イタリアン気取りで吹く(別にイタリア人が口笛吹いてる所見たことないけどね)。
　

選曲は、昔中学の同級生の「これマジやべぇから」が口癖だったＡ君から手渡されたＭＤの中の、一番のお気に入りのやつ。

曲名もアーティスト名も不明だけど、僕の気分が落ちてる時などに、無意識に口から再生される。
　
けど
　
そんなお洒落な設定でも、所詮は僕も人間。イタリア人も人間。

腹は、断末魔のような叫びをあげている。


アメ玉ひと粒でもいいから誰か恵んでくれないかなぁ。


ないよなぁ、この世知辛いご時世、こんなくたびれたシャツを羽織って髪の毛ボサボサで味噌汁臭い男なんかにアメ玉なんて……あげないよなぁ。
　
僕は、空腹を紛らわそうと、ポケットからタバコを取り出し、火を付けた。