○●雨色ドレス●○
「ちぇっ。また失敗だ」

チバは、ため息混じりに小さく呟いた。

「どうしたの? チバ」

するとチバは、歩美が裏に行ったのを見計らって小声で言った。


「お前にこんな事言うのもなんだけど俺さぁ……一回振られてるんだよ。歩美ちゃんに」


「ええー!!?」

「ばっ、バカ! お前声でかいんだよ!」

「す……みません」

プレッピーなイケメンを振るなんて……まさか歩美、あの日から男が嫌いになったとか?それか……

「他に好きな奴でもいるのかなぁ」


チバは恋する女子中学生みたいに、頬杖をついてため息を吐く。

「ため息吐きすぎると幸せ逃げますぜ」

僕がそう言うとチバは、大きくそれを吸い込んでニカッと笑った。

「なぁお前さ、歩美ちゃんに好きな奴いるのか聞いてきてよ。『休憩30分多くあげるよ券』三枚あげるからさぁ」

「いや無理無理無理無理!」

僕は全身を使って拒否をした。

「なんでだよー。減るもんじゃないし。いいじゃんいいじゃん」

無理です。僕には無理なんです。火に油を注いでひっくり返すくらいの危険な行為


僕には無理です。
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