○●雨色ドレス●○
僕は母ちゃんから長期レンタルをすることになったあの赤白チャリにまたがった。

家に帰るんなら、このまままっすぐ行けばいいんだけど、僕は右を曲がってあの坂道を全力でこいだ。

向かい風がしみて、涙目になる。おまけに鼻も垂れそうになる。まだ完璧には治ってないらしい。

あの日の女が気になる。

また会った所で、チキンな僕が声をかけれるハズも無いし、あの写真を見たところ、既に男がいるみたいだ。何かが芽生える可能性だってゼロに等しい。

だけど、また会いたいと思う。

あっそうだ。昔、小学生の頃、同じような気持ちになった事があったっけ。

近所の駐車場にたまーに現れるキジトラの野良猫。いるかどうかも分からない奴の為に毎日ランドセルにかつお節を隠し持っててさ、学校が終わるとすぐにそれ持って駐車場に走って。

駐車場に猫がいてもいなくても、走ってる間の時間、何故か幸せな気持ちになってたんだ。

そう、あの時と同じように心臓が高ぶってる。

僕はあの女に惚れたのか? いやそんなわけない。


これは恋とかじゃないような気がする。


……じゃあ、恋ってなんなんだ? 僕が決めた恋の定義ってなんだろう。


へっくし!

あーまた風邪ぶり返しそうだ。
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