○●雨色ドレス●○
「あっ、あの時の頭突き野郎だ」

女の子が僕を指差し言った。その表情が、少しだけあの時の女に似てるような気もしたけど、違う。


こんなケバくないし、髪の毛だって長くないし奇抜な金髪じゃない。

ナチュラル嗜好な僕のタイプじゃない。


僕はぼやけた頭をフル回転させて、“あの時”を検索した。数秒後、その答えが出た。


中央線で発狂に近い叫びをあげていたギャル女。柱をゲシゲシ蹴り飛ばしていた、“あの時”のだ。


「偶然、だね」

「……はい」

「あたしユウて名前。そっちは?」

「ぼっ、僕は……うっ上田です」

コワいです。こんな至近距離でギャル女と話すなんて……二言目には蹴られてしまうんじゃないか?

下手な事は口に出来ないな……。


「おー! オニーさんユウのこれデシタか?」

ヒゲモジャが親指を立てて、陽気に言う。僕は慌てて首を横に振り「違う」を連呼した。

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