○●雨色ドレス●○
僕達はそんな感じで意外にも盛り上がって、トルコ人達が次に来るのは明後日の昼3時からだというから、また皆で会う約束をした。

その日ユウは、用事があるらしく来れないらしいけど。


僕が赤白自転車にまたがり家に帰ろうとした時、ユウが、石段に座ってうつむいていた。


「どうしたの?」


僕がそうたずねると、ユウは魔女みたいな赤いハイヒールを脱いで足首を回した。


「痛え」


「当たり前だよ。そんな靴履いてたら足首おかしくしちゃうって。親指も赤くなってんじゃん。ほら、ばんそうこ」


僕は、カーキの肩掛けバッグからばんそうこを取り出しユウに渡した。


「えっ? 何これ」


「いやだからばんそうこ。貼りなって」

ユウは手渡されたばんそうこをじっと見つめ、しばらく黙っていた。

「どうしたの? あっ、もしかしてばんそうことか嫌いだった? なら靴ずれ用のパッチもあるから」

するとユウはお腹を抱えてゲラゲラと笑いだした。

「ケンケン最高~可愛いすぎ! 普通持ってないって。男がばんそうこって」

「えっ」


確かに。

ばんそうことか持ち歩くようになったのも、よく転んですり傷をつくる真弓の影響。付き合い始めてからついた癖だ。
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