○●雨色ドレス●○
8月16日土曜日。
雲一つない青空からは、痛いくらいの日差しがギラギラと地面を照りつけていた。
「おせーぞ、ケンケン。電車賃おごれーい」
日野駅前で携帯を打ちながらユウが壁に寄りかかっている。
「ごっ、ごめん! っていま9時58分じゃん。セーフセーフ。ふぅ」
「アウトアウト。あたしより遅く来たら遅刻だし」
バカでかいグラサンをかけたユウが、ニンマリと不気味に笑う。今日は、この青空にも負けないくらいの青いハイヒールを履いてた。
僕は、そのソール部分でスネを蹴られる事を想像し恐れ、それ以上の口ごたえは……諦めた。
「てかユウってハイヒール率高いよね」
僕が何気にした質問に対して、ユウは「そぉ? たまたまだし」と面倒くさそうに答えた。
「つーか早く乗ろ。暑くてマジ死ぬから」
「あ、うん」
僕は(ハイヒールに脅されて)大人二枚の切符を買った。