○●雨色ドレス●○


『僕と勝負だ! フック船長』


舞台は既に第三幕。



僕もユウも最初はあくびなんか出てたもののピーターパンが空飛んで登場した瞬間からテンションがMAXになってさ。

ピーターパン役って女の人がやるんだなぁって今初めて知ったよ。


隣を向くと、ユウが穴を開ける勢いの真剣な眼差しでピーターパンを見つめていた。

そんなユウを見て、あまりにも意外すぎる展開に少しだけ笑ってしまった僕にも、全く気づかないくらいの真剣な。


「ねえ、ユウ」

「ん?」

ユウは目を舞台に向けたまま返事をした。


「ウェンディが来てるドレスってさ、綺麗な色だよね。青って言うには足りないし、水色? インディゴ? ナイルブルー? やっぱり僕、衣装とかに目いっちゃうや」

「うん。綺麗な青


……雨色」

「えっ?」

「あっ、なんでもない。つーか今いい所だし! 集中して黙ってみてろ」

「はっ、はい」


雨色か……確かに言われてみれば、そんな色かも。



控えめで切なくて、しっとりしてて、それでいて真っ直ぐな





――雨色のドレス。


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