○●雨色ドレス●○

『只今神田駅線路内に人が立ち入った為、中央線上下線、運転を見合わせています。お急ぎ中の所、大変申し訳……――』
　
　
げっ……マジかよ。何もこんな時に立ち入らなくてもいいじゃん！
　
　
僕はきっと長引くであろう待ち時間を潰す為、キオスクで雑誌と缶コーヒーを買った。
　
そして、ゆったりとコーヒーブレイクを楽しもうとしたその時だった。


「ざけんじゃねぇよ！　ああ？」
　
　
　
凄まじい音と共に、女の怒鳴り声がホームに響いた。周りの人はみんな僕の右横を見ている。僕も恐る恐るその目線の先に目をやった。
　
　
うわっ、最悪……。
　
そこには、タバコを加えながら柱をゲシゲシ蹴りまくってるギャル女がいた。(しゅっ、終日禁煙なんだぞっ！)
　
　
髪の毛はまっ金金。いやもう白に近い。
　
ヒールは魔女みたいに高くて、顔は――きっともっとナチュラルにすれば……いやそうじゃなくて！
　
とばっちりを食うのは御免だ。僕のこの世で最も苦手な種族、ギャル。
　
　
「どいつもこいつも、あー腹立つ！　止まってんじゃねーよ中央線！」
　
ギャル女の足元には大量のキンキラ紙袋と派手なキャリーケース、そして花柄の四角い箱があった。(何者だコイツ？)